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第三章
死力を尽くして
しおりを挟むどれぐらい意識が途切れていたのだろうか……頭を踏みつけられる感覚で意識が少しずつ戻ってきた。
「か……ぐっ。」
声が出ない……。体を動かそうにもどこも動かすことができない。
「おっ、やっぱ生きてたかァ。しぶといなァ転生者。」
アイツの声が頭上から聞こえる。そして俺が動けないことをいいことに奴は俺の体の上にどっかりと座ってくる。
「テメェがこんなに追い詰められてるってのに、あの女は出てこねぇなァ。カカカ、薄情な野郎だぜ。」
俺は無理矢理声を絞り出して奴に問いかける。
「ど、ドーナと……ランはど…どうした。」
「あの二人の女かァ?向こうでテメェが起きるのをお待ちかねだったみたいだぜ?」
奴が指さした方向には地面から突き出した棒に張り付けに拘束されている二人の姿があった。
(よかった……。無事だったんだな。)
「さぁて、主役が起きたところでそろそろ悲劇を始めてやるかァ。」
「がっ……ぐっ……。」
奴は俺の首を鷲掴みにすると、片手で持ち上げた。
「どう惨たらしく殺してやろうかァ、要望はあるかァ?」
ニタニタと笑いながらそう問いかけてきた奴に、俺は無理矢理表情を動かして笑ってやった。
「あ、生憎……ここで死ぬつもりはないッ!!」
俺はスキルの龍化を全開にする。すると、あっという間に体がカオスドラゴンへと変化していく。体が大きくなったことで奴の手から逃れることができた。
「ハッ、図体がデカくなったところで状況は変わんねぇよ!!」
「それはどうかな。」
俺は持てる魔力をすべてブレスへと注ぎこむ。すると、黒色の丸い球体が口の前に形成された。
「ブレスかァ……トカゲの考えそうなことだぜ。」
こちらのブレスの発動を阻止すべく、奴は大地を巨大な槍へと変化させ俺の体を貫こうとしてくる。その大地の槍が体に触れる刹那……俺は龍化を解除した。
「アァ?」
カオスドラゴンを貫くことを想定したその槍は、急に龍化を解いて体を小さくした俺を捉えることはできなかった。
「龍桜……纏い衣滅っ!!」
先ほどカオスドラゴンの姿で発動させたブレスオブディザスターを体に纏わせる。最大の龍化状態で発動したものをそのまま使っているからか、纏い衣となったそれは普段よりも体に纏っている黒いオーラが濃いようだ。
「チッ……。」
即座に至近距離に詰めると、対応しきれないと踏んだのか奴は自分の体を大地でドーム状に覆った。
「消えろっ!!」
奴を守るそのドーム状の大地に触れると、一瞬でそれはサラサラの砂へと変わり防御の役割を果たせなくなってしまう。
「なんだァッ!?」
「もう一発だ。」
驚愕し、体が一瞬硬直した奴へと向かってブレスオブディザスターを纏わせた拳を振り抜く……。奴の体に触れる直前であの妙なシールドに阻まれるが、今度は受けきられることはなくバリン!!と音を立ててシールドが割れ、今度こそ拳が奴の体にめり込んだ。
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