上 下
410 / 1,052
第三章

来タル災厄

しおりを挟む

 城門から出ると、異様な殺気が正面から迫ってきているのを感じた。それはドーナ達も感じ取れたようで、一気に緊張が高まっていく。

 すると、前方から何者かがこちらに歩いてくるのが見えた。

 それがこちらに近づいてくるにつれその輪郭があらわになりはじめた。額から伸びた二対の凶悪な角、不自然に鋭く伸びた犬歯、悪魔のような羽根と尻尾……。

 まず間違いなく人間ではない。

 ある程度の距離まで歩いてくると立ち止まり、キョロキョロと辺りを見渡しながら話し始めた。

「あのアマはいねぇのかァ?」

「残念だがリリンはここにはいない。」

「チッ、逃げやがったか。まァいい、どっちにせよこの国もテメェもあの女も全部くたばる運命だ。」

「それはどうかな?」

 悠長に話している奴の懐に一瞬で潜り込み、腹に全力で拳を叩き込んだ。

 がしかし……。

「ハハァ~?なるほどなァ、よ~くわかったぜェ。」

「っ!!」

 全力で叩き込んだ拳は奴の硬い表皮に阻まれ、ダメージを与えるには至らなかったようだ。

「残念ながら相性は悪そうだなァ、もちろんテメェがな。」

 そう言ってトントンと奴が地面を足で小突くと、突然足元の地面の形が変わり、大地が槍となって俺を貫こうとしてきたのだ。

「おっと!!」

 バク転で後ろに飛んで回避すると、それを追いかけるように大地の槍が伸びてくる。

「はぁぁっ!!」

 その大地の槍をドーナとランの二人が粉々に破壊してくれた。

「ありがとう二人とも。」

「こいつが死の女神の……。」

「とんでもない力を感じるよ。」

 目の前に立っているアイツはへらへらとしているが、レス以上の力を感じる。それに近接戦闘が主体の俺に対して、奴は魔法で戦う遠距離型……。
 奴の言っているように相性は悪いのかもしれない。でもそんなのは本気でぶつかってみなきゃわからない。

「龍桜……。」

 持てる力をすべて使って……目の前の災厄を退けてみせる。

「二人とも、背中は任せた。」

 二人に背中を預けて、俺は一気に奴へと距離を詰めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い異世界転生。何も成し遂げることなく35年……、ついに前世の年齢を超えた。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...