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第三章
切りもの勝負の行方
しおりを挟むさてさて、こっちはキツネうどんの肝となる部分を仕込んでいこう。
冷蔵庫から油揚げを取り出した。
「まずは油抜きをしないとな。」
油揚げはその名の通り、揚げて作られているため油分を多く含んでいる。
油抜きをせずにそのまま味を付けてしまうと、油にはじかれてなかなか味が入りにくい。
油抜きの方法は簡単で沸騰したお湯で油揚げを少しゆでるだけだ。
「後は甘辛く味を付けた出汁でじっくり味を含ませる。」
出汁に砂糖、濃い口しょうゆ、みりんで味を付けてそこに水気をよく切った油揚げを入れて煮つける。
これであとはうどんの上にのせればいい。
「次は甘汁を作るか。」
温かいうどんやそばに使う味のついた出汁を甘汁、逆に冷たいうどんやそばに使う味のついた出汁を辛汁という。
今回はキツネうどん……温かいうどんなので甘汁を作っていく。
「まずは一番出汁を引いて……。」
鰹節と昆布で合わせ出汁をとり、そこにかえしという醤油を氷砂糖と味醂でまろやかに仕立てたものをいれて味を調える。
「うん、味はこんなもんでいいな。」
後はうどんをゆでて盛り付けていこう。うどんも本当なら手打ちにしたかったが……寝かせる時間も無いから今回は乾麺だ。
ゆでている最中、ネギを切っていたみんなの方を見てみると、既に切り終わったようで水で洗っているところだった。
そしてネギを洗い終えると水気を切って、こちらへ持ってきた。
「どうかしら?ちゃんと切れてる?」
「うん、このぐらい切れてれば大丈夫だ。だいぶ包丁の扱いが上手くなったな」
「ふふん♪当然よ!!」
「アタイのはどうだい?」
「どれ……うんドーナも綺麗に切れてるぞ。」
二人のネギは同じぐらい綺麗に切られている。多少つぶれているところもあるが、このぐらい切れていれば上々だ。
「どっちの方が綺麗に切れてるの?」
「う~ん、俺から言わせてもらえば二人とも同じぐらいだな。」
「ていうことは……。」
「今回は引き分けのようだねぇ。」
こうして二人の勝負は俺の判断で引き分けに終わった。
まぁでも、この短期間でここまで上手くなれたのはある種の才能なのかもしれないな 。
「お兄さん!!シアのも見てみて~。」
「あぁ。」
シアの切ったネギを見て戦慄が走る。
というのも、めちゃくちゃ綺麗なのだ。繊維もつぶれてないし、何よりネギの輪っかがひとつも千切れてない。
シアが使ったまな板を指で擦ってみるが、ネギの滑りも感じられない。
文句の付け所がない……まさに完璧だ。
「凄い綺麗に切れてるぞ。上手だなシア。」
「えへへぇ~♪」
シアの頭を撫でて褒めてあげる。今日の勝負はシアの一人勝ちのようだな。
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