上 下
397 / 1,008
第三章

お仕置き ミクモver

しおりを挟む

「シン!?大丈夫か?」

「う、うむ…すこし視界に星がちらつくが問題ない。」

 意識があるようで安心した…それにしても大きなたんこぶだな。ドーナとランがシンに手を出すとは思えない。
 恐らくは……チラッと犯人であろう人物の方を向くと、白々しく下手な口笛を吹きながら明後日の方角を見ている。

「……ミクモ?」

「わ、妾はな~んにも知らないのじゃ~。」

 あくまでもしらを切るつもりか…。いいだろう、ならこっちにも考えがある。

 明後日の方角を向き、いまだに口笛を吹いているミクモに近づき俺は彼女の頭の上でピコピコ動いている狐耳を軽く指でつまんだ。

「ひゃう!?」

 つまんだ瞬間にミクモは全身から力が抜けたようで、ペタンと座り込んでしまった。

「お、おぬゅし!!にゃにをするのじゃ!!はにゃすのじゃ~!!」

 か弱い抵抗を見せるミクモを見下ろしながら、俺はぽつりと彼女に向かって言った。

「……悪戯が過ぎる悪い子にはやっぱりお仕置きって必要だと思うんだ。」

「ひっ!?ま、待つのじゃ!!は、はなしあうのじゃ……の?のっ?」

 彼女の必死の懇願に対する答えの代わりに、俺は彼女の弱点らしい狐耳をもみくちゃにマッサージした。

「のほぉぉぉぉーーーっ!!??」

 医務室という空間にミクモの悲鳴が木霊する。

 それから数分後……シンのとなりのベッドにびくびくと痙攣しているミクモが転がっていた。そんな彼女の姿を見てドーナたちが口々に言う。

「ヒイラギって時々容赦ないわよね。」

「でもあんなお仕置きなら……ちょ、ちょっとやられてみたいかも…ねぇ。」

 最近ドーナの性格がわからなくなってきた。M気質な部分もあればSな部分もある。彼女にお仕置きするようなことが起こらないよう祈りたい。

「それにしてもヒイラギのその服…とっても似合ってるわね。」

「なんていうか、凄い着なれてる感じがするよ。」

「そうか?」

 ミクモが作ってくれたこの道着と袴は、ミストゴートの毛を染めずにそのまま用いて作ってあるらしく、純白の装束になっていた。
 上下白の装束は着たことがなかったから、似合っているかなんてわからなかったが…二人いわく似合っているらしい。

「だが、こんなに白いと汚れが目立ちそうだな。」

 純白の装束のためかなり汚れが目立ちそうだ。手入れが大変そうだな。

「そ、その心配は無用じゃ。」

 ヨロヨロとミクモが起き上がりそう言った。

「どういう意味だ?」

「しっかりと妾が編んだミストゴートの毛に汚れなんぞ付かん。返り血であろうと泥水であろうと関係なく弾くのじゃ。」

 超高性能じゃないか…手入れが簡単でいいな。

「わ、妾にもっと感謝してもよいのじゃぞ?」

「ありがとうミクモ。お礼にもっかい耳摘まんであげようか?」

「や、やめるのじゃ!!こっちにくるでない!!」

 必死に手を前に出して、来るなという意思表示をしているミクモ弄りをしばらく楽しむのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします

吉野屋
ファンタジー
 竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。  魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。  次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。 【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】  

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

処理中です...