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第三章
不幸なシン
しおりを挟むそして中に入ってきたのは……。
「む?なんだ、もう喧嘩はおさまっておるではないか。」
恐らくミクモとドーナ達が喧嘩をしていると聞きつけて、駆けつけたシンだった。
(ナイスタイミングだ!!)
「シン!!ちょっと頼んだ!!」
「むっ!?ヒイラギよどこへ行くのだ?」
シンが入ってきたことによりできた、三人の隙をついて俺は医務室を飛び出した。
「シン坊!!お主はなんと間の悪いヤツじゃ!!あやつが行ってしもうた!!」
ヒイラギを追いかけて医務室を飛び出したミクモだったが、既に辺りにヒイラギの姿はなかった。
「シ~ン~坊~っ!!」
踵を返して、ミクモは真に鬼の形相で迫る。
「み、ミクモ殿!?お、落ち着いて欲しいのだ!!」
「これが落ち着いておられるわけ無いのじゃ!!このッ……たわけ!!」
「ぐぬぅ!?」
怒髪天を衝かんが如く怒ったミクモは、シンに全力でげんこつを喰らわせた。
「な、なぜ我がげんこつを喰らわねばならん……のだ。」
「ふん!!妾の邪魔をした罰じゃ!!」
「理不尽…ガクッ。」
そしてシンは頭頂部に大きなたんこぶを作り地に伏した。
そんなことが起きている最中、当のヒイラギは人気の無いところでいそいそと道着と袴を身に付けていた。
「うん、凄いしっくり来る。」
生地も全然ごわごわしてないし、違和感は全くない。
「少し動いてみるか。」
道着と袴を着こんで体を動かす。新しいから少し固いかと思ったが、しなやかで体の動きを阻害することがない。
「日本にいたときでも、こんなに軽くて動きやすいの着たことないな。」
これはいいものを作ってもらった……改めてミクモにはお礼を言っておこう。
「さて着替えたし戻るか。」
タイミング良く来たシンにあの場を任せてしまったしな。きっと今頃はミクモに絡まれているに違いない。
ここまで走ってきた道のりを戻って医務室へと向かう。すると医務室の近くでメイド達が慌てているのが見える。
俺はそのうちの一人に声をかけた。
「何かあったのか?」
「シン様が倒れてしまったのです!!」
「なんだって!?」
急いで医務室の中に入ると、頭に大きなたんこぶをこさえたシンがベッドに横たわっていた。
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