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第三章

ミクモのいたずら

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 翌日……。

 まどろみから意識が覚醒し始めると、妙な違和感を感じ取った。

(なんだ?妙に顔周りが温かい……それにほんのり甘い香りもする。まだ夢の中にいるのか?)

 ふと目を開けると、視界が肌色で覆いつくされていた。

「むぐっ!?」

 何かが顔を圧迫していて息ができない。もがこうにも両腕は、ドーナとランの二人にがっちりホールドされており動かすことはできず、モゴモゴと息をするために口を動かすことしかできなかった。

「おん?起きたかの?」

 必死に息をしようと口をモゴモゴさせていると、聞き覚えのある声が頭上から聞こえた。

「むっふっふ、妾のに包まれながら迎える朝はどうじゃ?極楽じゃろ?」

「むぐ!?」

(み、ミクモ!?なんで彼女がここにっ……っていうか早く退いてくれ!!)

 唯一動く頭を振って、抵抗の意思を見せるが……。

「これ、そんなに暴れたら服がはだけてしまうじゃろ?それともお主……もしやわざとやっておるのか?」

 ミクモの口調からも、彼女がこちらの反応を楽しんでいることがわかる。

「ふわあぁぁ……寝ているお主達を見たら妾も少し眠くなってきたのじゃ。昨日は徹夜したからのぉ~。」

「むぐっ!?むぐぐ~!!」

 嫌な予感が背中をよぎり、抵抗の力を強める。すると……。

「むぅ、こそばゆいのじゃ。お主、モゴモゴ口を動かすでない。満足に寝られぬではないか。」

 更にギュッとミクモは俺の顔に胸を押し付けてきた。もう口すらも満足に動かすことができない。そんな俺のことなんてお構いなしに寝息を立て始めたミクモ……。

 俺の意識も再び暗闇へと落ちていった。







「ハッ!?」

 再び意識が覚醒しガバッと体を起こすと、俺は先程まで寝ていた場所ではない別の部屋のベッドの上にいた。

「い、生きてる。」

 なんとかミクモの胸で窒息死は免れたらしい。あの後誰か助けてくれたのか?

 周りをキョロキョロ見渡すが、俺以外この部屋には誰もいないらしい。みんなどこへ行ったのだろうか……。

「誰かいないのか?」

 そう誰もいない空間に問いかけるが、答えなど帰ってこない。ライラすらもいないのか。

「それにしても何でミクモが部屋にいたんだ?」

 王宮に忍び込んで俺たちの部屋に入り込んだのだろうか?あの気配を消せる技があればなんとでもなりそうだな。

「シンもいたずら好きとは言っていたが……少しいたずらが過ぎるな。」

 次会ったらお返ししてやろう。ミクモへの仕返しを企んでいると外から爆音が聞こえた。
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