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第三章

ヤギ肉フルコース

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 風呂から上がった俺はいつもの広場でハウスキットを展開した。

「ドーナ達にお風呂から上がったら、ここに来るように伝えてくれないか?」

「かしこまりました。」

 そうレイラに伝えて、ハウスキットのなかに入りコックコートに着替えて厨房へ向かう。

「さて、仕込むか。」

 調理台の上に今日解体してもらったミストゴートの肉を並べていく。今日使うのはモモの赤身肉と、ロース、バラ肉だ。

「まず時間のかかるヤギ汁から仕込んでいこう。」

 ヤギ汁はヤギ料理の定番だが、処理の仕方によってはただ臭い汁になりかねないので注意だ。といってもミストゴートのポテンシャルが今のところ分からないから、探り探りで処理をしていく必要があるんだが……。

「まずはバラ肉を薄切り。」

 バラ肉を薄切りにして、塩、胡椒、ハチミツで下味をつける。そしたら下味が肉に染み込んでいる間に酒を混ぜたお湯を沸かす。
 後は沸いた所に下味を付けたバラ肉を入れて茹でる。ここで重要なのが出てくる灰汁をひたすら取り続けることだ。

「ん?意外と……独特な匂いはないな。」

 普通のヤギ肉なら、茹で始めると独特な香りがしてくるものだが……ミストゴートの肉はそんなに灰汁も出てこないし、変な匂いもない。

「よし、一回冷ましておこう。」

 灰汁が出てこなくなったらザルに上げて常温でゆっくり冷ます。

「次は野菜だな。」

 大根とニンジンを銀杏切り、ネギは斜めに切る。キャベツは適度な大きさにざく切りする。今回使う野菜は以上だ。
 本当のヤギ汁は野菜はあまり入れることはないが、せっかくだから少しアレンジして作ろうと思う。

「後は鍋にゴマ油をしいて、おろしニンニクとおろし生姜、豆板醤を香りが出るまで炒める。」

 香りが出たらたっぷり水を入れ、野菜と丘あげしたヤギ肉を入れて酒、味醂、味噌、鶏ガラスープの素で味をつけてじっくり煮込む。
 ヤギ汁はこのまま煮込んでおくとして、次の料理に取り掛かろう。

「次はロースだな。」

 ロースはステーキにする。ただ普通にステーキにするとクセがあるかもしれないので、今回はガーリックステーキにする。
 ミストゴートのロース肉に塩、胡椒で下味をつけて、ガーリックオイルにロース肉を漬け込む。これで10分程置いておけば臭みが気にならないぐらいにはなるだろう。

「今のうちに刺身を切ってしまおうか。」

 モモ肉を柔らかく食べられるようになるべく薄く切っていく。後はポン酢で食べるなり、普通にわさびと醤油で食べてもいい。
 ヤギ肉の刺身は火を通すよりもクセも臭みも少ない。比較的食べやすい料理なんだ。

「最後にステーキを焼いて今日のメニューは以上だな。」

 フライパンでガーリックオイルにつけておいたヤギ肉を焼く。固くなりすぎないように焼き加減はミディアムレアだ。
 後は食べやすいように切り分けて器に盛り付ける。

「よっし、これで終わり。」

 俺が調理を終えると同時にハウスキットの扉が開く音がした。
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