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第三章
アルを救うため
しおりを挟むレイラとそんな話をしながら歩いていると、あっという間に大浴場についてしまった。
「ヒイラギ様、着きました。」
「ありがとう。」
案内してくれたレイラに礼を言って、大浴場の中へと入った。そして服を脱ぎ、温かいお湯で体をしっかりと洗ってから深い湯船に体を沈めた。
「あ゛ぁ~……やっぱり最高だな。」
この声は我ながら親父くさいと思う。だが、暖かい風呂に入るとどうしても出てしまうものなんだ。もうこれはある種の条件反射のようなものになってしまっている。
今思えば人間の国に居たときは風呂という概念すらなかった。王族とかは入っているのかもしれないが、一般的には広まっていないらしい。宿屋とかにもなかったしな。
この国では風呂というのは一般にも広まっているのだろうか。もし王族だけだったとしたら……今相当贅沢をしていることになるな。
「風呂が贅沢…か。」
日本に居たときには考えられないな。
向こうに居たときの記憶を思い返していると、風呂場から脱衣場へと繋がる扉がガラガラと音をたてて開いた。
「待たせたなヒイラギ。」
「いや、俺も今湯船に浸かり始めたところだ。」
シンも自分の体を洗い流してから、すぐとなりに体を沈めた。
「っはぁ~、やはり風呂は良いものだ。」
「まったくだな。」
湯船に体を浸して、一息ついた後シンは問いかけてくる。
「それで、話とはなんなのだ?」
「街外れにある教会のことなんだ。」
「あの教会か……もうあそこは人の出入りがなくなって随分経つな。」
「実は今日そこに行ってきたんだ。あの教会に祀られている女神に会うために。」
そう話すと、シンは腕を組みながら少し難しそうな表情を浮かべる。
「女神か……確か以前ヒイラギの仲間の一人も女神だと言っていたな。」
「イリスのことだな。」
「その女神と何か関係があるのか?」
「まぁ、俺もあまり詳しくはないが……女神という存在はこの世界に何人か存在してるらしい。で、彼女達の生きる力の源は人々からの信仰らしいんだ。」
「信仰か……む?そうなると、あの教会に祀られている女神は今信仰を得ていないのではないか?」
「あぁ、俺達が会いに行った時には死にかけだった。なんとか応急処置で一命は取り留めたがな。」
「むぅ……。」
「あの教会に祀られているのは、豊穣の女神なんだ。集まった信仰の見返りに、土地を豊かにしたり、作物の実りを良くしていたらしい。」
そうアルの事をシンに話していると、彼は何かに気がついたようだ。
「あの教会が廃れた時期と、不作が始まった時期がほぼ重なっている。まさか、昨今この国の農作物が不作になっているのは、それが原因かっ!?」
「おそらくはな。」
「であればいち早く手を打つ必要があるぞ!!話ではその女神は死にかけだったのだろう?」
「あぁ、今はなんとか命を繋いでるって感じだ。」
「わかった、その教会は我が責任を持って復活させよう。」
これできっと後々この国の不作は解決されるだろう。そしてアルにも活力が戻るはずだ。
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