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第三章

メイドのお仕事事情

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 エノールにお礼を告げて、俺達は王宮へと戻ってきていた。

「皆様おかえりなさいませ。」

 そこでは例のごとくレイラがこちらを出迎えてくれた。

 ここに来てからレイラが普通に休んでいる姿を見ていない気がするが……ちゃんと休めているのだろうか?

 そんな疑問を抱いていると、じ~っとレイラが俺のことを見ているのに気がついた。

「ヒイラギ様、お洋服にホコリが積もっております。どこかホコリの多いところへお出かけでしたか?」

 やはりレイラの目はごまかすことはできなかった。しっかり払ったつもりだったんだが‥

「ちょっと外れにあった教会を掃除しに行ってきたんだ。」

「あそこは人が去ってから何十年も経っておりますから、とてもひどい荒れようだったのではないですか?」

「あぁ、凄かったよ。木製品にカビが生えてたぐらいだったからな。」

 何十年も手入れされずに放置されてれば、あの有り様も納得だな。

「お風呂は沸いておりますので、先に汗と汚れを流してはいかがでしょう?」

「そうだな。あぁ、それとシンも呼べるか?少し話があるんだ。」

 シンにあの教会のことを話しておかないとな。

「かしこまりました。」

 そしてレイラはメイド服のポケットから鈴を取り出して、チリンチリン…と鳴らした。

「ただいまシン様のもとへメイドを向かわせました。少し時間がかかると思いますので、先にお風呂へご案内いたします。」

 そこで俺はドーナ達と別れ、レイラと共に大浴場へと向かった。
 向かっている途中で気になってきたことをレイラに聞いてみることにする。

「レイラ達メイドって休みの日ってないのか?」

「休暇でございますか?一般メイド達は3日に1度の休日がございます。」

(ホワイト!!しっかり休みを取れるいい職場だった。やっぱりそういうところはちゃんとしてるらしい。)

「レイラはどうなんだ?」

「私はメイド長ですから休暇はございません。」

(きゅ、急にブラックだぞ。……でもシンがそれを知らないわけないし。なによりあの性格だ、きっとレイラにも休んでほしいと思ってるはず。)

「シンに休めとかって言われないのか?」

「言われない日はございません。」

 思ったとおりだった。それなのに休んでないということは、よっぽどこのメイドという仕事に思い入れがあるのだろうか。

「不思議でございますか?」

「ん?あぁ……。」

 こちらの考えを読み取ったかのように、レイラがそう聞いてきた。

「この王宮のお仕事は、私の幼い頃からの夢でございました。故に休暇をいただくより、メイド長として勤めている方が幸せなのです。」

 そう話しているレイラの姿はとても輝いて見えた。
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