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第三章
人質を取られたヒイラギ
しおりを挟む「ん……くあ、よく寝たな。今何時ぐらいだ?」
「おはようヒイラギ、今日も寝顔可愛かったわよ♪」
「あんまりからかわないでくれ。」
「からかってなんかないわよ~。ホントのことだもの、ねっ?ドーナ?」
くすくすと笑いながらドーナに同意を求めるラン。男の寝顔が可愛いわけないのだが……。
「そうだねぇ。」
あれ、なんかこの弄られ方はデジャヴ感じるな。どうやら二人は俺のことを弄るとどうなるか、学んでないらしいな。
「いいのか?二人とも、晩ごは……ん。」
話している途中であるものに目が留まった。
「ら、ラン……その手に持っているのは」
「こ~れ?さぁ、いったいなにかしらねぇ♪」
「俺の包丁ケース……。くっ、まさか…。」
「ふふふ~ん、人質には人質を。ヒイラギがワタシ達の晩御飯を人質に取るなら~、ワタシ達もヒイラギの大事なものを人質にすればいいのよね♪」
しまった……もう少し厳重に管理しておくべきだった。まさかこういう形で、反撃に使われるとは思っていなかった。
「それで~?晩御飯がどうかしたのかしら?」
「なっ、何でもない」
流石に料理人の命ともいえる包丁を人質に取られては何もできない。次からはそれはもう厳重に管理しておこう。
「これでヒイラギはワタシ達にいじられても反撃できなくなったわね♪」
ドーナとランがハイタッチをして喜びを分かち合っているのを尻目に、ひとり息を荒くしている人物がいた。
「はぁ…はぁ…。」
「い、イリス?なんだか息が荒いが、大丈夫か?」
「ふ、ふふふっ、やっぱりヒイラギさんは悔しがっているお顔が一番可愛いんですよね。」
心配して損した気分だ。
「そういえばイリスは悔しがってるヒイラギの顔が好きって言ってたわね。」
「どんなところに可愛さ感じてるんだ!?」
「だって可愛いじゃないですか。それに普段滅多に見られるものでもないですし。」
恍惚とした表情で語るイリス。さすがの二人もドン引きしている。
「ね、ねぇヒイラギ。やっぱりイリスって本当に女神なのかしら?」
「この世界でこういう人物を女神と呼ぶなら女神なんだろうな。」
「断じてアタイの知ってる女神様はこんなじゃないよ。」
イリスの女神としての威厳、印象がガラガラと音をたてて崩れ去った瞬間だった。
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