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第三章
神出鬼没
しおりを挟む市場を離れ、再び大通りへとやってきた。
「ねぇ~ヒイラギ~!!お願いだから考え直してよ~。」
「晩御飯抜きはツラすぎるって~。」
ドーナとランの二人に、先ほどからずっとこんな感じで何とか晩御飯を食べようとせがまれているのだ。しかも腕に纏わりつかれてるから、なかなか歩きにくいうえに周囲の視線が痛い。
「わ、わかった、わかったから!!一回離れてくれ、歩きにくくてかなわない!!」
「「晩御飯食べさせてくれるなら離れる……。」」
(君たちホントはめちゃくちゃ仲いいだろ!?)
一言一句たがわず同じ言葉を同時に話せるなんて、そうとしか考えられない。
しかも第三者から見たら完全に悪役はこっちじゃないか!!さっきからすれ違う獣人たちが、みんなこっちをチラ見してるんだよ!!
「わかったから!!ちゃんと二人の分もしっかり作るから、これでいいだろ?」
「「ホント!?」」
「あぁ、嘘はつかない。」
その言葉に二人はハイタッチして喜んだ。
「やったわね♪」
「作戦成功だねぇ~♪」
完全に謀られたようだ。
まさか公の場でこのやり取りをさせたのも二人の作戦か!?だが、二人で話し合っている様子もなかったし……アイコンタクトだけでこんな作戦を思いついたとでもいうのか?
流石に策士過ぎるし、そうだとしたら二人の意思疎通の熟練度が半端じゃない。
「相も変わらず賑やかじゃの~妾も混ぜてたもれ♪」
今朝のように突然現れたミクモは、俺の背中に抱き着いてきた。すると彼女の豊満で柔らかい胸がぐみゅっと押し付けられる。
「み、ミクモ……あの、当たってるんだが?」
「ん~?なにがじゃ~?ほれほれ言うてみい♪」
恥ずかしがっているこちらをからかうように、ミクモはぎゅっとさらに胸を押し付けてきた。その姿を見て二人が黙っているはずもなく……。
「ちょっと!!ヒイラギに何してるのよ!!」
「ヒイラギも何顔真っ赤にしてるんだい!!」
(い、いや…こんなことをされて顔が赤くならない男はいないだろ!!完全に不可抗力だ!!)
なんて反論するわけにもいかず、赤くなっている顔を隠すため下を向きうつむいた。するとミクモはさらに調子に乗る。
「むっふっふ、なかなか愛い反応をするの~お主?そんな反応をされたらもっといじめたくなってしまうではないかっ。」
そんな悪戯をされながらも、何とか俺はブラケへと戻るのだった。
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