転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
361 / 1,052
第三章

サラマンダーから出てきたもの

しおりを挟む

 まぁミクモのことはひとまず置いておこう。今は先にこのミストゴートを解体してもらわないとな。

「こいつの解体にはどのぐらいかかりそうだ?」

「すぐに解体できますよ。」

「ならお願いしてもいいか?」

「かしこまりました。」

 サラマンダーのように、解体に数日がかりというわけではなさそうだ。
 もし、肉の解体に時間がかかるのであれば毛皮だけお願いしようと思っていたが……問題なさそうだな。

「それでは解体に少し時間をいただきますので、その間お飲み物でもいかがですかな?」

「ぜひいただこう。」

「かしこまりました。ではこちらへどうぞ。」

 ジルに案内され、以前サラマンダーのことを話し合った応接室へとやって来た。

「そちらへお座りください。いま飲み物を持ってこさせます。」

 ジルがパンパンと手を叩く。すると、間もなくして飲み物が運ばれてきた。
 それを一口飲んでから、ジルは話し始める。

「実はですな、ここに案内したのはヒイラギさんに私からも話があったからなんです。 」

「その話とは?」

「えぇ、まずはこれをご覧下さい。」

 ジルはなにやら宝石箱のような物をテーブルの上に置いた。 そしてカチャカチャと鍵を外して、箱を開けて中身をこちらに見せてきた。

「これは……。」

「サラマンダーを解体していたところ、体内から見つかった何かの玉でございます。」

 箱の中には深紅に染まった丸い水晶玉のような物が入っていた。何度も見た形だ。

「サラマンダーの宝玉か……。」

「宝玉…ですかな?」

「あ…。」

 しまった、思わず口に出てしまっていた。流石にスキルのことを話すわけにもいかないし、何かいい説明の仕方はないだろうか。

 そう頭を悩ませていると……。

「長い年月を過ごした龍の体内にごく稀に生成されるものよ。」

 悩んでいた俺にランが助け船を出してくれた。スキルのことを話したくないという、俺の意思を感じ取ってくれたらしい。

「なるほど……長いことこの店を営んできましたが初めてお目にかかりました。やはりまだまだ龍種は謎が多い存在ですな。」

「まったくだ。」

 ホッと胸を撫で下ろしていると、ランがこちらに視線を向けてウインクで合図を送ってきていた。

 ホント助かったよ。

「こちらはもちろんヒイラギ様にお譲りいたしますのでご安心下さい。」

「いいのか?」

「討伐なさったのはヒイラギ様です。それに私共は既に頭部をいただきましたので。」

「そうか……助かる。」

 サラマンダーの宝玉をジルから受け取り、バッグへとしまった。
 これもまた後で使い道を考えないとな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い異世界転生。何も成し遂げることなく35年……、ついに前世の年齢を超えた。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く

りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

処理中です...