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第三章
サラマンダーから出てきたもの
しおりを挟むまぁミクモのことはひとまず置いておこう。今は先にこのミストゴートを解体してもらわないとな。
「こいつの解体にはどのぐらいかかりそうだ?」
「すぐに解体できますよ。」
「ならお願いしてもいいか?」
「かしこまりました。」
サラマンダーのように、解体に数日がかりというわけではなさそうだ。
もし、肉の解体に時間がかかるのであれば毛皮だけお願いしようと思っていたが……問題なさそうだな。
「それでは解体に少し時間をいただきますので、その間お飲み物でもいかがですかな?」
「ぜひいただこう。」
「かしこまりました。ではこちらへどうぞ。」
ジルに案内され、以前サラマンダーのことを話し合った応接室へとやって来た。
「そちらへお座りください。いま飲み物を持ってこさせます。」
ジルがパンパンと手を叩く。すると、間もなくして飲み物が運ばれてきた。
それを一口飲んでから、ジルは話し始める。
「実はですな、ここに案内したのはヒイラギさんに私からも話があったからなんです。 」
「その話とは?」
「えぇ、まずはこれをご覧下さい。」
ジルはなにやら宝石箱のような物をテーブルの上に置いた。 そしてカチャカチャと鍵を外して、箱を開けて中身をこちらに見せてきた。
「これは……。」
「サラマンダーを解体していたところ、体内から見つかった何かの玉でございます。」
箱の中には深紅に染まった丸い水晶玉のような物が入っていた。何度も見た形だ。
「サラマンダーの宝玉か……。」
「宝玉…ですかな?」
「あ…。」
しまった、思わず口に出てしまっていた。流石にスキルのことを話すわけにもいかないし、何かいい説明の仕方はないだろうか。
そう頭を悩ませていると……。
「長い年月を過ごした龍の体内にごく稀に生成されるものよ。」
悩んでいた俺にランが助け船を出してくれた。スキルのことを話したくないという、俺の意思を感じ取ってくれたらしい。
「なるほど……長いことこの店を営んできましたが初めてお目にかかりました。やはりまだまだ龍種は謎が多い存在ですな。」
「まったくだ。」
ホッと胸を撫で下ろしていると、ランがこちらに視線を向けてウインクで合図を送ってきていた。
ホント助かったよ。
「こちらはもちろんヒイラギ様にお譲りいたしますのでご安心下さい。」
「いいのか?」
「討伐なさったのはヒイラギ様です。それに私共は既に頭部をいただきましたので。」
「そうか……助かる。」
サラマンダーの宝玉をジルから受け取り、バッグへとしまった。
これもまた後で使い道を考えないとな。
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