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第三章
ブラケ店長ミクモ
しおりを挟むミクモが店だと言うこの建物は看板も出ておらず、一見では店なのかすらわからないような建物だった。
「ここが…店なのか?」
「妾が一人で営んでいるからの、このぐらいの小ささがちょうどいいのじゃ。ほれ、入るぞ。」
彼女の後に続いて店の中へと入ったが…店内には服が並べられておらず、本当に服屋か疑ってしまいそうになる。
「……服屋と聞いていたんだが。」
「お主…服のことをな~んもわかっとらんのぉ~。」
チッチッチ…とミクモは渋い顔をして人差し指を振った。
「服は妾のようにと~っても繊細なのじゃ!!こんな陽が当たるところに服を晒したら日焼けしてしまうのじゃ!!」
少なくとも今の今まで感じた印象じゃ、ミクモが繊細なのはあり得ないと思う。思わず突っ込みたくなったが、その言葉をなんとか喉の奥へと押し込んだ。
「ならずっとこんなしまっておいてるのか?」
「それもまた違うのじゃ!!確かに普段は木棚にしまっておるが、たまに陽に当ててやらんと服を食べる虫が湧く。」
服を食べる虫か…。日本にいた頃タンスの中にしまっていた服に小さな穴が空いていたりしたが、それと同じようなものかな。
「生憎そういうのに関してはあまり知識がなくてな。」
「まぁよい。それで、妾に服を作って欲しいのじゃろ?」
「あぁ、こういうのを作ってほしいんだが…。」
俺はミクモにあらかじめスケッチブックに描いておいた道着と袴のデザインを見せた。少し絵には自信がある。きっと伝わってくれるはずだ。
「なるほどの~…こっちの上着の方はよくある造形じゃが、こっちのやつは妾の店にはない。それ以前に妾が作ったことがない造形だの。」
まじまじとスケッチブックに描かれたデザインを見るミクモ。やはり袴は作ったことがないらしい。
「これの材質はなんなのじゃ?」
「羊の毛だ。もっと正確に言うのであれば山羊の毛だな。」
「ほ~?山羊の毛か…ちょっとここで待っていろ。」
そう言い残しミクモは店の奥へと消えていった。そして戻ってきたときには、いくつか袋を携えていた。
「この3つが今ここにある山羊の毛じゃ、触ってみて一番触り心地が近いものを教えるのじゃ。」
「わかった。」
さて、まずはこれから確かめてみるか。俺は目の前に置かれた袋の1つに手を入れた。
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