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第三章
ブラケへ
しおりを挟む朝食を食べ終えた後、シンに教えてもらった服屋を探して大通りに来ていた。
「確か、シンはブラケって言ってたよな。」
大通りの町並みをキョロキョロ見渡しながらブラケという服屋を探した。俺達がこの王都へ入ってきた方へと歩いていくが……。
「なかなか見つからないな。」
「ほうかほうか、見つからんか?」
「あぁ、なかなか……って!!はっ!?」
あまりに自然な会話だったため、ついつい受け答えをしてしまったが、まったく聞いたことのない声色だった。
声がしたところには、いつの間にか狐の耳と尻尾のついた、シアのように人間に近い獣人が立っていた。
「くはは!!いい驚きっぷりじゃ。お主がシン坊が言っとった人間じゃろ?」
こちらが驚き、あっけにとられているのを尻目にその狐の獣人は高笑いしながら言った。
「シンが言っていた…というのは?」
「む~?お主、服を探しておるのではないのかえ?シン坊からはそういう風に聞いとったがの~。」
服を探していることを知っている……まさか。
「あんたがブラケの?」
「ようやく気がついたようじゃな。その通り!!この妾こそ、この大通りの隠れた名店…ブラケの店長のミクモじゃ!!」
自己紹介をしてくれたミクモというこの狐の獣人が、探していたブラケの店長らしい。
「まぁ立ち話もなんじゃ、ほれこっちじゃよ~。」
ちょいちょいっと手招きしながらミクモは歩きだした。一歩踏み出す度に、腰に生えている大きな狐の尻尾がゆらゆらと揺れている。
(くっ…なんだあのモフモフはっ!?シンの鬣よりよっぽど気持ち良さそうじゃないか。)
だが、初対面の相手に触らせてくれと頼めるわけもないので、グッとこらえながらミクモの後に続いた。
その途中、ランが耳打ちしてくる。
「ねぇヒイラギ?あの人多分……。」
「わかってる。間違いなくヤバい。」
ドーナとランはミクモを警戒しているらしい。いくら人通りが多い通りだったとはいえ、俺でもミクモの接近に気が付かなかったのだ。
相当気配を消すことに慣れている…もしくはそういうスキルを持っている。そう考えるのが妥当だろうな。
それにシンのことをシン坊と呼んでいたことも気になる。この国の王であるシンのことをそんな風に呼べる人物…それが一体どういう人物なのか……。
そう思考を巡らせていると……。
「そんなに警戒するでない。妾は敵ではないぞ?」
不意に後ろから声が聞こえたと思ったら、ついさっきまで前を歩いていたミクモが俺の背後にいた。
「……っ。」
「くはは!!うむ良い顔じゃ~♪ほれほれ、そんなことをしてるうちに着いたぞ?」
ミクモに顔を掴まれ、グイッと無理矢理顔を向かされた先には、大通りには似つかわしくない小さなお店があった。
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