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第三章

羨望の的グレイス

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 さて、とりあえずテーブルの上に料理を並べてみんなが来るのを待つとするか。フレイとイリスが座っているテーブル席に料理を並べていく。
 運ばれてきたエッグベネディクトを見て二人は口を開いた。

「これはまた不思議な料理ですね。」

「ね~?ヒイラギさんこれってなんていう料理なの?」

「これはエッグベネディクト…と言いたいがマフィンを使ってないからな。フランスパンのエッグベネディクト風…と言ったところか。」

「「エッグベネディクト風?」」

「あぁ、~風って言いうのは厳密にいえば本来そういう名前の料理とは違う料理なんだが、その料理になるべく似せて作ったものに~風ってつけるんだ。」

 例えば、パスタでいうところのカルボナーラ風だったりアラビアータ風だったり、実際のオリジナルとかなり似てはいるが少し違うものに使われることが多いな。

 二人に説明をしているとハウスキットの扉が開き、ドーナ達が入ってきた。

「皆おはよう、もう食べるだけになってるから座ってくれ。」

 皆と挨拶を交わし、席へ見送っているとリリンがふらふらとこちらに歩み寄ってきた。

「お、おはようリリン…調子は大丈夫か?」

「大丈夫……ではないわね。あのときからずっと体が火照って仕方がないのよ。」

 な、なんとか態度はいつものリリンに戻ったようだが、体の方があの感覚を忘れられていないらしい。

「ちょっと耳を貸しなさい。」

「へ?」

 リリンに言われた通り彼女の顔に耳を近づけると、耳元であることを囁かれる。

とりなさいよね。」

 それだけ言うとリリンもライラと共にテーブル席についた。

 なんか変な方向に話が進んでないか?あ、あとで一度リリンと話し合う必要がありそうだな。

 まぁ、今は先に朝食を済ませてしまおう。俺も席につき手を合わせた。

「「「いただきま~す!!」」」

 いただきますと挨拶をしたのはいいものの、誰一人エッグベネディクトに手をつける様子がない。

 食べ方がわからないようだ。それじゃあまず一回食べて見せるか。

 エッグベネディクトの卵にナイフを入れると半熟の卵黄が溢れだした。食べやすいサイズに切り分けて溢れた卵黄とソースをたっぷり絡めて口に運ぶ。

「うん、美味しい。」

 俺が食べるのを見て皆も真似をして食べ始めた。皆が舌鼓を打つなかで、パタパタとグレイスがこちらに飛んできた。

「ヒイラギさ~ん。食べるの手伝ってほしいっす~。」

「あっ…すまない。今回の料理はちょっとグレイスじゃ食べにくかったな。ちょっと待ってろよ。」

 グレイスのエッグベネディクトを食べやすいサイズに切り分け、フォークに刺して差し出す。

「ほい、口開けて。」

「か、感謝するっす!!いただきま~っす!!」

 グレイスは小さい体で口を大きく開いて、差し出されたエッグベネディクトを頬張った。取りあえず今回はグレイスにずっとこんな感じで食べさせないといけないな。

 まぁこればかりはグレイスのことを気遣えなかった俺が悪い。

 この時グレイスは周りから羨望の眼差しを向けられていたが、当の本人は料理に夢中で気が付くことはかった。
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