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第三章
フレイの思惑
しおりを挟むレイラに案内されて、みんながいるはずの一室に向かっている最中……通路でフレイとばったり会った。
髪がしっとりと濡れているため彼女も風呂に入ってきたのだろう。
「あっヒイラギさん!!ヒイラギさんも今お風呂に入ってきたの?」
「あぁ、今ちょうど上がった所だ。そういえばリリンの様子はどうだ?」
俺の電撃を喰らって頭が大変なことになっていたからな。
「お姉様?う~ん、何かずっとベッドで毛布にくるまってモゾモゾしてたよ?」
うん……。これは、まだリリンの頭は治っていないらしい。一眠りしたら治るといいんだが…。 会うたび会うたびに、あんなことをせがまれたらたまったもんじゃない。
「ヒイラギさんは今からお部屋に向かうとこでしょ?ボクも一緒に行ってもいいかな?」
「構わないぞ。」
「えへへ、ありがと~。」
そしてフレイは何を思ったのか俺の腕に抱きついてきた。
「シアちゃんはいいなぁ、いっつもこんな風にヒイラギさんに簡単にくっつけて。」
「フレイだって吸血の時にくっついてるじゃないか?」
「違うよ~!!ボクが言いたいのはそういうことじゃなくて、普段からってこと……あっ!!そうだ、あはっ♪い~いこと思い付いちゃったぁ~。」
腕にくっつきながらフレイは嫌な笑みを浮かべていた。なにやらとても嫌な予感がする。こういうときの嫌な予感ってのは当たるから怖い。
フレイと共にレイラの後に続き、いよいよ自室の前に着いた。中は静かだが、確かに人の気配は感じるため、おそらく先ほどリリンに眠らされたドーナたちが眠っていることだろう。
起こさないようにゆっくりと扉を開けて中に入ると、やはりみんな大きなベッドの上でぐっすり眠ってしまっていた。
「ありゃりゃ、みんなぐっすりだね。」
「あぁ……そういえばリリンがドーナ達を眠らせたあの攻撃って、フレイは何か知ってるか?」
「あれはお姉さまの蝙蝠の毒だね~。ヒイラギさんの角度からじゃ見えなかったかもしれないけど、二人の首筋に一瞬睡眠毒の牙を持ってる蝙蝠が噛みついたんだ。」
「そういうことだったのか。」
「そういう……ことっ!!」
「っ!?」
不意にフレイにドン…とソファーに向かって突き飛ばされる。体を起こそうとするが、その前にフレイがのしかかってきた。
「あはっ♪ボクも進化したから結構力強いでしょ~?」
「吸血するなら普通に言ってくれればさせてあげるのに。」
「なんか、今日は強引にやりたい気分なの~。」
そしてあっという間に俺の服を引っぺがすと、彼女は俺の胸に耳を当ててくる。
「ん~……この心臓の音、安心するなぁ。こう密着してないと聞こえない音。」
彼女は脈打つ心臓の音を聞いた後、肩に唇を当ててきた。
「今日は少し趣向を凝らそうかな。……はむっ。」
噛みつかれた肩から何かがトクトク…と注がれてくる感覚を感じる。
「ん?血は吸わないのか?」
「普段はすぐに血をごくごく飲んじゃうから、ヒイラギさんの体に負担がかかっちゃうよね?だから今日はぐっすり眠りながら、ゆっくり……ゆ~っくり血を吸おうかなって。」
そう彼女が言った途端に、強烈な睡魔が突然襲い掛かってくる。
「うっ……こ、これはまさか。」
「そ、睡眠毒。大丈夫だよ……すごく薄めてるから。普段よりぐっすり眠っちゃうだけ。」
そう説明している間にもどんどん意識は沈んでいく。
「おやすみなさい、ヒイラギさん。」
フレイのその言葉を最後に意識は微睡みの中に沈んでしまった。
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