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第三章
シンの狙い
しおりを挟むシンはいよいよ、俺をここに呼び出した理由を語り始めた。
「実はまだ家臣のものにも話していないのだが、この戦いが終わった後…我は人間の王に会いに行こうと思っている。」
彼の口から語られた、とんでもない言葉に驚きながらも俺は彼に問いかける。
「野暮な質問だとは思うが、一つだけ聞いておく。人間の王に会って何をするつもりなんだ?」
「我ら獣人族と……人間の関係を改めるべく、我自ら話をしに行くのだ。」
「それがとてつもなく危険なこと…というのは理解しているんだろうな?」
「無論理解の上だ。」
「それじゃあ、もちろん家臣から反対の意見が多く出ることもわかっているんだろうな?」
もちろんシンがそんなことをしようと画策しているのであれば、彼の身の安全を心配する配下から反対の意見が多く出ることだろう。
ただでさえシンは配下からも、国民からも信頼が厚いからな。
「そこは我が何とか説得して見せようぞ。」
「……そうか。」
ここ何日かシンと過ごしてみてわかったことだが、彼は一度決意を固めてしまったらて梃子でも動かすことのできない人物だ。
当然、シンと関わり合いの深い家臣たちもそれは分かっているはずだ。止めようとする家臣と、絶対に意見を押し通そうとするシンとの間で壮絶な戦いが繰り広げられそうだ。
シンの言葉に頷いていると、彼は不思議そうに問いかけてきた。
「ヒイラギは我を止めようとはしないのか?」
「ん?俺は別にシンがちゃんと危険性を理解しているのであればそれでいいし、何よりまた以前のように三種族が分け隔てなく暮らせれば……最高だろ?」
俺が止めてもシンは行くというだろう。それに俺としては、また三種族が共に暮らせればそれでいい。
「だが、シン…一つだけ俺からお願いがある。」
「む?なんだ?」
「仮にもし人間の王族が獣人族やエルフ達に対して、未だに奴隷という意識を抱いていたとする。そうなるとシンが人間の王に出会う前に襲われる可能性だってある。」
「うむ、そうだな。」
「もしそうなった場合、俺たちはシンの味方をするが……。」
「同じ人間の中では敵になってしまうということだな?」
つまりはそういういうことだ。俺がシンの味方をして、襲ってきた奴らを返り討ちにした場合…人間からしたら俺は獣人族に寝返った裏切り者だ。
「そう、それで肝心のお願いっていうのは……。」
「今の話を聞けばわかる。そうなってしまった場合には、この国に身を置かせてほしいということだな?そんなことであれば容易いこと。それに友を裏切ることなど我にはできぬ。」
「その言葉を聞いて心底安心したよ。願わくばそんなことにならないのが一番なんだが……な。」
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