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第三章
王宮の秘密の部屋
しおりを挟むレイラに案内された場所はなんと玉座の間だった。
「それではシン様、ヒイラギ様…ごゆるりとお楽しみください。」
「レイラよご苦労だった。」
呆気にとられている俺にペコリと一礼して、彼女は玉座の間を後にした。彼女が去った後、俺はシンに問いかける。
「なぁシン?ここって玉座だよな?」
「いかにも。」
すると彼は玉座の裏に回り、こちらに来るように促してくる。
「ヒイラギこっちだ。」
シンに促されるがままに玉座の裏に回ると…。
「玉座の裏に扉?」
「うむ、ここが入り口なのだ。」
玉座の裏の壁には、正面からは見えないように巧妙に隠された扉があった。シンが言うにはどうやらここが入り口らしいな。
「ここの存在を知っているのは、我と現メイド長のレイラだけだ。」
「そんな重要な場所を俺に教えていいのか?」
「無論だ。ヒイラギはこの国の恩人であり、我の友であるからな。」
そしてシンはその扉をゆっくりと開けた。そこには下へと続く階段が設置されていた。
「我が王座についてからまだここは一度も使われておらぬ。先ほどレイラに使えるようにしてもらったのだ。」
なるほどな。ここの存在を知っているレイラしかできない仕事だから……大変だな。
「ではゆこうぞ。」
シンが先に階段を下り始め、俺もその後に続いた。階段に松明などの明かりはなくとても暗いようだが……なぜか俺の目には昼間のように明るく見える。
前を歩くシンも何事もなく気にせず歩いているところを見るに、彼も夜目が利くのだろう。
「シンは夜目が利くんだな?」
「む?もしや人間は利かぬのか?」
「普通の人間はな。まぁ俺は問題ない。」
「そうか、そろそろ脱衣場が見えてきたぞ。」
階段を下り終えると、また一つ扉があった。
「ここの奥が脱衣場か?」
「うむ。」
シンが扉を開けると脱衣場の中から目映い光が溢れだした。さっきまで暗いところにいたため、ちょっと刺激が強い。
光に目が慣れてきたので辺りを見渡すと、そこは本当に簡素な脱衣場だった。
「松明もないのに何でこんなに明るいんだ?」
「それはこの壁に使われている鉱石が自ら光を発しているからだ。今となってはもう採掘できぬ貴重な代物なのだぞ?」
自ら光を発する鉱石か…これまた面白いものがあるんだな。まじまじと壁を眺めていると、シンはもう服を脱ぎ始めていた。
それを見て、俺もいそいそと服を脱ぎ籠の中に入れた。
「大浴場よりは小さいが、こちらはそれなりに風情があるぞ?」
「それは楽しみだ。」
ガラガラと脱衣場と風呂を仕切っている扉を開けると、目の前に大小様々な岩で形作られた風情のある風呂が現れた。
「これはなかなか俺の心をくすぐる風呂だな。」
「気に入ってくれたようで何よりだ。」
そして俺達はよく体を洗ってから湯船に体を沈めた。少しぬるめのお湯だ、恐らく長時間入っていられるようにという配慮だろう。
「それで話ってなんなんだ?」
「うむ…実はな。」
いよいよシンの口から話の本題が語られ始めた。
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