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第三章
リリンとの戦いの後で
しおりを挟むライラにズルズルとリリンが引きずられて行ったのを見送った後、シンが口を開いた。
「すさまじい戦いだった。リリンの体を分裂させる技もさることながら、特にヒイラギのその……肉体変化というべきか。その技はすさまじい力を感じる。」
「あ、そういえば解除するの忘れてたな。」
龍桜を解除すると、俺の体が元の姿へと戻っていく。
「先ほどの姿であれば、幻の獣人としてこの国を歩けるやもしれんな。」
「幻の獣人だって?」
「うむ、遥か昔……初代獣人族の王はドラゴニュート、つまり龍の姿の獣人だったと伝承が残っているのだ。」
「そうだったのか。」
その龍の姿をした獣人は、元から龍の姿で生まれたのか……それとも俺と同じようにスキルで龍の姿になれるのか、気になるところではあるな。
「まぁ昔の話だ、我が生まれるよりも遥かに前に龍の姿の獣人はどこかへ姿を消したらしい。現に今のこの国にもそんな姿の獣人はおらん。」
シンからそんな話を聞いていると、レイラがこちらに歩み寄ってきた。
「シン様、場所のご用意ができました。」
「うむ、では参ろうか。」
レイラと話したシンはこちらに向きなおると、ある誘いを持ちかけてきた。
「ヒイラギよ、これから共に風呂でもどうだ?」
「風呂か……ちょうど汗もかいたし、もらおうかな。」
「うむ、ではレイラよ頼んだぞ。」
「はい、かしこまりました。」
レイラに案内されて城の中へと入って行くが……大浴場へと向かっている途中、俺はある違和感を覚えた。
「なぁシン、大浴場って…こっちじゃないよな?」
そう、俺たちはいつも入っている大浴場とは違う方向に進んでいるのだ。まさかレイラが道を間違えるとは思えないため、故意的にこちらに進んでいるとしか思えない。
俺の疑問にシンは大きくうなずいて答えた。
「うむ、今我らは会談専用の風呂場へと赴いているのだ。普通の会話であれば大浴場でも良いのだが、今回はちと複雑でな。」
重要な話を誰にも聞かれないようにするための部屋に向かっているというわけか。そんな事をしないといけないほどの話か……いったいどんな話をされるのだろうか。
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