上 下
338 / 977
第三章

対決リリン!!

しおりを挟む

 倒れた二人のもとに駆け寄って、体を起こしてみると、特に二人の体に外傷はなく…まるで眠ってしまっているようだった。

「安心しなさい、眠っているだけよ。」

「あぁそうみたいだな。」

 二人は、メイド達が部屋へと運んで行った。そして改めて俺はリリンと向き合う。

「さぁ、次はあなたの番よヒイラギ。吸血鬼を料理で誘惑した罪をここで清算してもらうわ。」

「それは自制心が弱いリリンが悪いんじゃないか……。」

「うるさいっ!!」

 リリンはムキになると、大鎌を手に一気にこちらに切りかかってきた。

「おいおい、当たったら死ぬんだが!?」

「このぐらい本気でやらないと…意味無いでしょ!!」

「実力を確かめるってんなら、普通は攻めるのは逆だろ!?」

「うるさいうるさい!!うるさーい!!」

 こちらの言葉をかき消すように、さらにリリンの攻撃が激しく…速くなっていく。本当に一瞬でも気を抜いたら命を刈り取られてしまいそうだ。

 そんなやり取りをしている最中、俺はリリンの振るう一つの攻撃に狙いを定めた。

「ふんっ!!」

 上段から振り下ろされた大鎌を、白刃取りで受け止める。

「なっ、何よその芸当はっ!!」

「これが技術ってやつだ。」

 そして白刃取りしたリリンの鎌を奪い取り、距離をとった。

「ずいぶん洒落たことをやってくれるじゃない。ヒイラギ……。」

「ま、これを奪い取ったところでこういう武器の扱いは慣れてないからな。返すよ!!」

 リリンへ向けて彼女の鎌を放り投げる。一直線に彼女へと向かって飛んで行く鎌は、不自然に彼女の目の前でぴたりと止まり、再び彼女の手に納まった。

「あら、ありがと。それじゃあ私からもお返しをあげるわ。」

 そう言って彼女は大鎌で空中に横一文字を描いた。

「ブラッドウェーブ。」

 直後、真っ赤な斬撃が俺に向かって高速で飛んできた。

(ただ避けたんじゃ……力を示せないよな。)

 迫りくる赤い斬撃を前に、俺は完成した奥義を使う…。

「奥義……龍桜。」

 龍桜を使った状態で、迫る斬撃に手を翳す。するとリリンの放った斬撃は、俺の手に触れた瞬間に跡形もなく霧散した。

「へぇ、それが……あなたの全力ってわけね。」

「あぁ。」

「なるほどね、それじゃあ……。」

 目の前でクスリと笑ったリリンだが、その言葉の途中で彼女の姿が一瞬で夜闇に溶けるように消えた。

「確かめてみようかしら!!」

 直後、背後から彼女の声が聞こえ……強烈な殺気を孕んだ攻撃が飛んでくる。その攻撃を屈んで躱すと、纏い衣で足にサンダーブレスを纏わせ背後へと向かって回し蹴りを放つ。

「っ!?」

 ほぼノータイムでの反撃だったから、当たることを確信していたのだが……その確信に反して、リリンの体が一瞬で無数の蝙蝠に分裂し、攻撃を回避されてしまう。

「奥の手を使わせるなんて、やるじゃない?」

「そっちこそ体を分裂できるなんて、随分便利な体だな。」

「まぁね~。」

「ってか、それよりもさっきの攻撃っ完全に俺のことを殺すつもりで振ってたよな!?」

「ふふっ、どうかしら?覚えてないわ~♪でもまぁ、うっかり手が滑っちゃうことは……あるかもしれないわね♪」

 一瞬目を瞑ってニヤリと笑ったリリンの隙をついて、懐に潜り込む。

「隙ありだ。」

「それはどうかしら?」

 龍桜状態で破槌をリリンに放つが、またしても彼女は蝙蝠に体を分裂させて回避してしまう。

 だが、これは想定内…。俺は分裂した蝙蝠が合体するその瞬間に全神経を集中させる。

「見つけたぞっ!!」

 分裂した蝙蝠が合体しようと集まる瞬間……その群れの中に飛び込むと一匹の蝙蝠を捕まえた。

「キィッ!?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

処理中です...