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第三章
もふもふ
しおりを挟む俺を視界に捉えたシンは、なぜかこちらに猛スピードで走ってきた。
「ヒイラギよ!!」
「ど、どうしたんだ?」
「我のこの鬣を見てくれ!!」
「ん?鬣……?」
よくよく彼のトレードマークである鬣を眺めてみると……ある変化に気が付く。
「ずいぶんボリュームが増したな。」
今日のシンの鬣は昨日と比べて明らかにボリュームが増していて、彼が少し動くたびにもっふもっふと揺れ動いていたのだ。
こう……こんなに目の前でもっふもっふと揺れ動かれると、思わず触りたい衝動に駆られてしまうな。
「触ってみてもいいか?」
「うむ!!ヒイラギにならば触られても構わぬ。思う存分触ると良い。」
どん…と胸を張ったシンの鬣に手を突っ込んでみた。
(おぉ!!すごいもふもふしてて…触り心地抜群だな!!)
シンの鬣をもふもふと触っていると、彼が問いかけてくる。
「む?む?ど、どうなのだ?」
「控えめに言って最高の触り心地だった。ありがとう。」
できればまた後でゆっくりとモフりたい……。それは後でお願いしてみよう。
「さ、もうすぐできるんだ。中に入ってくれ。」
シン達をハウスキットの中に招き入れると、フレイがみんなが眠ってしまっていることに気が付いた。
「あ、あれ?シアちゃんたち…寝ちゃってる?」
「あぁ、ちょっとマッサージしてあげたらみんな寝ちゃったんだ。」
「自分やってもらってないっす~!!」
寝ているシアの腕の中でグレイスが声を上げる。
「あ、グレイスちゃんはやってもらわなかったんだ。」
「みんなすっごい気持ちよさそうだったっす~。」
そうグレイスが言うと、フレイがジト目でこちらに視線を送ってきた。
「ふ~ん、いいなぁ~いいなぁ~。ボクもやってもらいたかったなぁ~。」
俺の周りをぐるぐると回りながら恨めしそうにフレイは言ってくる。
「あ、あとでやってあげるから……。」
「言質取ったよ?絶対だからね!!」
「あぁ、約束する。」
「えへへ~楽しみだなぁ~、楽しみだなぁ~。」
約束してあげると、一転上機嫌になったフレイ。
何日か一緒に過ごしてみてわかったことだが、彼女は案外嫉妬深いところがある。気を付けなければならないな。
そして眠っていたみんなを優しく起こして、俺は調理に戻るのだった。
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