331 / 973
第三章
膝枕と耳かき
しおりを挟むフレイは食事を終えると、リリンの様子を見に行くと言ってどこかへ行ってしまった。
彼女を見送った後、俺は王宮の外に設置したハウスキットへと歩いて行く。レイラに案内されずとも、ハウスキットを展開しているあの場所までの道のりは覚えた。
いざハウスキットの中に入ると、そこではドーナ達がくつろいでいた。
「あ、ヒイラギじゃない。もうフレイの食事は終わったの?」
「あぁ、いろいろあったが、何とか終わったよ。」
コーヒーメーカーにスイッチを入れて、熱いコーヒーを淹れる。それをソファーに座って飲んでいると、シアがあるものとじゃれあっているのに気が付いた。
「ふにゃぁぁ……このふわふわ気持ちいぃ~♪」
「ん?それは……シア、ちょっとそれ貸してくれないか?」
「うん!!」
シアから受け取ったそれは、俺が日本で愛用していた梵天付きの耳かきだった。どうやら梵天のふわふわがシアの興味を引いたらしい。
「お兄さん、それなぁに?」
「これは耳の掃除をする道具なんだ。試しに使ってあげようか……ほらシア、ここに頭乗せて。」
「はーい!!」
「「あっ!!」」
シアが俺の膝枕に頭を乗せたのを、ドーナとランの二人がうらやましそうに眺めている。
「二人にもシアの後でやってあげるから。大人だから順番…待てるよな?」
「う~、わかったわよ。」
「で、でも約束だから、ちゃんとアタイ達にもやっておくれよ?」
「あぁ約束する。」
そしてアルコールで耳かきの先端を消毒し、シアの耳に耳かきを近づけていく。
「それじゃ今から耳かきするぞ。危ないから動くなよ~。」
猫の耳の構造はわからないから、まずは浅い入口からカリカリと耳垢を掻き出す。すると、耳かきで耳を撫でる度にシアが気持ちよさそうな声を上げた。
「ふにゃぁぁ~……すっごく気持ちいい~♪」
「入り口付近はこのぐらいでいいかな。それじゃもう少し奥を掃除しようか。」
そしてシアの両耳を掃除し終える頃には、すっかりシアは眠りに落ちてしまっていた。最後の仕上げに、細かい耳垢を飛ばすため耳に軽く息を吹きかけると……。
「ふみゃっ…ふにゃぁ~……。」
「はい、おしまいっと。」
シアをソファーにごろんと横に寝かせると、ドーナたちの方に視線を向けた。
「さ、次はどっちだ?」
「次はワタシよ~っ!!」
「あっ、ラン!!ずるいよ!!」
「ふふふ、こういうのは早い者勝ち~♪さ、ヒイラギお願いするわ~。」
「はいはい、それじゃランも耳かきの途中で動かないようにな。」
そしてランにも耳かきを施すのだった…。
35
お気に入りに追加
631
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
女王直属女体拷問吏
那羽都レン
ファンタジー
女王直属女体拷問吏……それは女王直々の命を受けて、敵国のスパイや国内の不穏分子の女性に対して性的な拷問を行う役職だ。
異世界に転生し「相手の弱点が分かる」力を手に入れた青年セオドールは、その能力を活かして今日も囚われの身となった美少女達の女体の弱点をピンポイントに責め立てる。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
料理を作って異世界改革
高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」
目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。
「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」
記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。
いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか?
まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。
そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。
善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。
神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。
しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。
現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる