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第三章

吸血鬼の進化

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 朝食を作り終えた後、俺はフレイとともに王宮のある一室にいた。

「きょ、今日もごめんね……ヒイラギさん。」

「いいんだ。また肩からでいいのか?」

「うん、大丈夫。」

 上着を脱いでフレイに背中を差し出すと、背中に彼女の手が触れた。

「あれ……ちょっと汗かいてる。」

「さっき朝食を作ったから、その時に少し汗をかいたのかもな。」

 すると、ぬるりと熱い何かが肌を這った。

「な、何を……して?」

「あ、ご、ごめんなさい。凄く甘い香りがしたから……つい舐めちゃった。」

「汗をか?」

「う、うん……ボク達吸血鬼は体液だったら、何でも栄養になるの。だから汗でも、ボクからしたら大切なご飯なんだ。」

 そう言って、フレイは背中に舌を這わせ、汗を丁寧に舐め取っていく。

「ぷはっ……そ、それじゃあそろそろ……いただきます。」

 荒い息遣いで、フレイは肩に口を近づけてくると、優しく噛みついてくる。
 そしてストローから飲み物を飲むように、ちゅ~ちゅ~と俺の体から血液を摂取していく。

(それにしても、汗とかの体液まで吸血鬼の栄養になるとは……初耳だった。)

 まだまだ吸血鬼については知らないことだらけだな……としみじみと感じていると、ふと鏡にフレイが吸血している場面が映っていることに気が付いた。

(こんなに必死になって……まるで赤ん坊だな。)

 必死に血液を求めてちゅ~ちゅ~と吸い出しているフレイの姿には、人間の赤ん坊の姿が重なってしまう。

 そんな彼女の姿を、ほっこりとしながら鏡越しに眺めていると、満足したのかフレイは肩から口を離した。

「はっ、はっ……お、美味しかったぁ~。ご、ごちそうさまでした。」

「満足か?」

「うん!!凄く体に力が満ち溢れてくるみたい……ってあれ?」

「ん!?」

 恍惚とした表情で話していたフレイだが、突如として彼女の体の内側から光が溢れてくる。

「な、なんだ!?」

 その後、彼女の体はまるで繭のように、完全に光に包まれてしまう。

「何が起こってるんだ?」

 フレイが包まれた光の繭に手を触れてみると、みるみるうちに光の繭が崩れていく。
 そして、その中からまたフレイが姿を現した。彼女はゆっくりと瞳を開けると、こちらへ満面の笑みで微笑みかけてくる。

「ありがとうヒイラギさん、ボク……できたよ。」

「進……化?」

 状況を理解する間もなく、部屋にリリンが突然押しかけてきた。

「フレイ!?」

「あ、お姉さま……見てみて!!ボク進化したよ!!」

 くるりと回ってみせたフレイにリリンは、思わず泣きそうになっていた。
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