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第三章

完成した奥義

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「………………はっ!?」

 沈んでいた意識が覚醒し、体を起こす。

。」

 これで何回目だ?20回目から数えるのをやめたから……正確な数字はわからない。

 散桜を完成させるため、試行錯誤しながらレスと戦い何十回と死んだが……やっとこの世界ならではの方法で、散桜のデメリットを打ち消す方法を見つけた。

「龍化………。」

 そうポツリと呟くと、俺の体を黒い鱗が覆い、背中からは翼が生え、腰からは尻尾が生えた。

 この龍化というスキルは、文字通り体をドラゴンへと近付けるスキルだ。
 最初こそ使い道がイマイチわからなかったものの、使ってみると、このスキルはかなり汎用性の高いものだとわかったのだ。

 このスキルは、姿をドラゴンへと近付けるのはもちろんのこと、肉体そのものをドラゴンのように強靭にする。
 つまり、人間の肉体じゃ負荷が強すぎる散桜も、このドラゴンの肉体なら耐えられる。

「散桜…。」

 ドクン……と心臓が大きく脈打ち、全身の血流の勢いが増したのを感じる。
 
(ここから更に……出力を上げる。)

 この世界に来てから、俺に新たに付与されたもの……それは魔力。
 体内にある魔力を血液とともに全身に循環させるイメージを、強く……強く想像する。

 すると、淡い紫色のオーラが体から溢れ始め、それと同時に身体能力が大幅に上がったのを実感できる。

「……完成だ。」

 これが今の俺ができる散桜の最終形態。龍桜りゅうおうとでも名付けようか。

「さ、待たせたな。」

 改めてレスへと向き直る。すると奴は瞬間移動でまた、俺の背後へと回った。

「メガフレ……。」

「遅い!!」

 魔法が発動する前に、回し蹴りで奴の顔面を捉えた。

 よろめくレスへと、サンダーブレスを纏わせた拳の連打を叩き込む。
 その拳一つ一つがレスの体を貫通し、あっという間にレスの体が穴だらけになる。

「……やっと、実力でお前に勝てたな。」

 右手に持てる魔力を全て集中させ、レスに最後の一撃を叩き込む。
 すると、レスの体へと流れたサンダーブレスが肉体の一片も残さず奴を消し去った。

「か、勝った……。」

 花畑に仰向けに体を預けると、いつの間にかイリスが隣りにいた。

「調子は如何ですか?」

「あぁ、やっと掴んだ。……ドーナ達の方はどうだ?」

「ふふっ、ご心配なく。ドーナさん達も目標はちゃんと達成しましたよ。」

「ってことは、二人ともカオスドラゴンを倒したのか!?」

「はいっ♪今は、もう別な目標に向かって努力していますよ。」

「はは、やっぱりあの二人は凄いな。」

 戦闘に関するセンスが俺とは段違いだ。思わず嫉妬してしまう程に……。

「ちなみに外の世界だとどのぐらい時間が経った?」

「約6時間ほど…でしょうか。ちょうどあちらは朝日が登る頃ですよ。」

「うん、ちょうど良い。それじゃ、一回ドーナ達のところに戻してくれ。」

「わかりました、それでは私の手を握ってください。」

 そしてイリスの手を握ると、視界が一瞬光に覆われた。

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