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第三章
〆の雑炊
しおりを挟む量を調節したという俺の言葉にシンが首を傾げた。
「量を調整した?なぜだ?」
「この鍋料理には〆っていうものがあってな、この鍋に残ってる出汁まで全部美味しく食べて鍋料理は完食なんだ。そのために今からご飯をここに入れる。」
今一度カセットコンロに点火して鍋出汁を沸かしていく。そしたら一度水で洗ったご飯を入れる。ご飯を水で洗う理由は出汁にとろみがつくのを防ぐためだ。
「そしたら上から溶き卵を全体に流し入れる。」
満遍なく溶き卵を流し入れて火を落として蓋をする。卵が半熟になったら完成だ。
「これが鍋料理の〆…雑炊だ。」
ガパッと蓋を開けると、味が染み込んだご飯とトロトロの半熟玉子が姿を現した。
「ふわあぁぁ!!美味しそう!!」
「鍋に使った具材の旨味を全部ご飯が吸収してるからな、相当美味しいぞ?」
みんなが自分の分を取っていく最中、フレイは涙目でリリンに懇願していた。
「お姉さまぁ~!!ボクも、ボクもあれ食べたいよ~!!」
「な、泣かないでフレイ?食べてもいいから…その代わりちゃんと吸血もするのよ?」
リリンはフレイの涙にあたふたしながらも、食べることを許可してあげていた。リリンは妹思いだから……こういうのには弱いのだろう。
「えへへ…ありがと♪」
早速フレイは自分の皿に雑炊を盛ってスプーンで口に運んでいた。
「ふわぁ~…美味しいなぁ~、お姉さまは食べないの?」
「わ、私は…どうしようかしら。もう結構食べちゃったし…。」
う~んと悩むリリン…少し背中を押してやろう。
「ちなみに、このご飯は溶けだしたコラーゲンも吸ってるからな。」
「……!?」
「リリンが食べないなら私達が代わりに食べてあげるわ~。」
「せっかくだからねぇ~。」
「はわっ……なっ!?」
ドーナとランの二人が雑炊を取ろうとしているのを、この世の終わりのような顔でリリンは眺めている。
しかしいよいよ我慢のダムが決壊したらしく…。
「うぅ~!!ライラっ、私にもあれを取りなさい!!」
「フフ、かしこまりました。」
そしてライラに雑炊をよそってもらうと、リリンはドーナ達に負けじと食べていた。
「くっ、なんで血液じゃないのにこんなに美味しいのよっ!!ホントにヒイラギっ、あなたの料理は私達をダメにするわ。」
「誉め言葉として受け取っておくよ。」
リリンとフレイも雑炊を食べ始めた為、あっという間に鍋の中は空っぽになった。
「おなかい~っぱい!!」
「はふぅ~、ボクもいっぱいだよ~。」
シアとフレイは自身のお腹をポンポンと手で叩いて、満腹をアピールしていた。
「ワタシ達も食べたわね~?」
「そうだねぇ~、これで少しでも効果が出てくれればいいんだけど……。」
「ふふっ♪効果が出るように私に祈ってもいいんですよ?」
神頼みならぬ女神頼みか……。下界に干渉できないと言っておきながら、イリスは何だかんだ干渉してるから、案外やってくれるかもな。
すると食べ過ぎて動くのもままならなそうなリリンが口を開いた。
「ヒイラギ…あなたとシンにはちょっと話があるから残りなさい。わ、わかったわね?」
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