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第三章
アンゴロウの鍋出汁
しおりを挟む鍋に水を入れてアンゴロウのアラと昆布を入れて火にかける。昆布は水に10分程浸けて戻しておくといい。
沸騰直前で昆布を取り出してアンゴロウから出た灰汁を丁寧に取り除きながら、じっくりと煮出していく。
「次は肝を裏ごして合わせ味噌を作ろう。」
霜降りした肝を裏ごして味噌と混ぜ合わせる。そこに味醂とおろしニンニクを入れれば合わせ味噌の完成だ。
後は出汁に合わせ味噌を溶かし入れるだけ。
「……うん。これで大丈夫。」
肝を裏ごして味噌に入れたことにより味に深いコクが出た。臭みもないし、とてもいい出汁だ。
さぁ、後はイリスを手伝うか。
どうやら残っている切りものは、人参だけのようだな。皮を剥くのに苦労しているらしい。さっき教えたときは、包丁で皮を剥いてしまっていたから…それを真似してしまっているようだ。
「すまない、気が利かなかった。これ使えば剥きやすいぞ。」
人参の皮剥きに悪戦苦闘しているイリスにピーラーを手渡した。
「これは何ですか?」
「ピーラーって調理器具でな、皮が剥きにくい野菜の皮を剥く専用の調理器具だ。人参に刃の部分を当ててゆっくり下に引いてみてくれ。」
言われた通りにイリスは人参にピーラーの刃を当ててゆっくりと引いた。すると、先ほど前の苦労が嘘のように、するすると人参の皮が薄く剥かれた。
「わっ!!これ凄いです!!」
「だろ?それじゃあ切るの手伝うから、人参の皮を剥いたら渡してくれるか?」
「わっかりました~。」
シャーッ…シャーッと、イリスはリズムよく人参の皮をピーラーで剥いていき、あっという間に一本剥き終えた。
「よし、ありがとう。後は任せてくれ。」
イリスから人参を受け取りトントンと一定のリズムで斜めに切っていく。それを真横で見ていたイリスがぽつりと溢す。
「うーん、やっぱりヒイラギさんは凄いですね。切った大きさも厚さも全部同じになってます。」
「これも慣れだよ。そのうちイリスもできるようになるさ。」
人参を切り終えバットに並べた。さぁ後は盛り付けるだけだ。
「今回は二つ鍋を作るから、俺の盛り付けを見ながら一緒に盛り付けよう。」
「わかりました。」
まずはアンゴロウのアラを鍋の底に盛る。そして上から白菜をたっぷりと覆い被せてその上にネギ、人参、キノコ…そしてメインのアンゴロウの身と皮、ヒレ、細切りにした胃袋を盛り付ける。
豆腐とか白滝も欲しかったが、市場を探してもどこにも無かったから今回はこれで我慢しよう。
最後に上から出汁を流し入れて蓋をする。
「よしこれで完成。」
「こんな感じでいいでしょうか?」
俺の見本を見て盛り付けを終えたイリスが、おずおずと確認をお願いしてきた。
「大丈夫だ。綺麗に盛れてるぞ。」
「ホントですか?」
「あぁ、自信を持っていいぞ。」
「ふふっ、ありがとうございます!」
さて、鍋の用意もできたからみんなを呼びに行こうか。
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