転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

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第三章

ジルの涙

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 火山地帯から王都まで歩いて帰ってくると、少し陽が傾き始めていた。

「少し陽が傾いちゃったな。」

「そうね~、でもワタシは楽しかったわよ。ヒイラギと一緒にいろんなところを見て回れたしね~。」

 急いで向かった時とは違い、帰りはゆっくり周りの景色を楽しみながら帰ってこれた。意外とデートっぽい雰囲気だったし、ランも楽しんでくれていたようだ。

「あの店にこいつを持っていって解体してもらうか。」

「あのジルって獣人きっと見たら驚くわよ~。」

 サラマンダーを解体してもらうため、市場にある魔物肉専門店へと向かった。

 市場は既に朝のような人通りはなく、いくつかの店はもう閉まっているため閑散としていた。

「朝あんなにたくさん人がいたのに、この時間になるともうこんなに寂しくなるのね~。」

「結局朝に大量に物が売れて在庫が無くなるからな。」

 そのため夕暮れ辺りにはもう閉場する市場も多いのだ。人通りの少ない肉売り場の通りを歩き、目的の魔物肉専門店にたどり着いた。 
 周囲の店は閉まっているのにも関わらず、ここはまだ営業しているようだった。

「よかった、まだやってるみたいだな。」

 扉を開き中へと入ると、ジルが俺たちを待っていた。

「御待ちしておりました。こ無事でなによりです。」

「もしかして、ずっと待っててくれたのか?」

「ホホ…ヒイラギ様であれば必ず戻ってくると信じておりましたので。」

 どうやらジルは俺達が帰ってくるのを信じて、ずっと待っていてくれたようだ。

「サラマンダーとは出会えましたかな?」

「あぁ、しっかり討伐隊の人達の仇は討ってきたよ。」

「そう…でございますか、これで彼らも少しは報われることでしょう。」

 ジルは目の縁に少し涙を浮かべながら言った。もしかすると討伐隊の隊員達の中には、ジルの知り合いがいたのかもしれない。

「私も歳ですな。涙腺が緩みきっておりました。」

 ジルは胸ポケットから白いハンカチのような布を取り出して目に溜まった涙を拭った。そして次の瞬間にはキリッと表情を切り替えた。

「さて…仕事の話に戻しましょう。サラマンダーの死体は今もまだ火山にあるのですかな?」

「いや、きっちりここに入ってる。」

 マジックバッグをポンポンと手で叩いた。

「魔道具ですな?サラマンダー程の大きさの魔物も入るとは、また珍しい物をお持ちですな。」

「あぁこいつには本当に助けられてるよ。さっそくサラマンダーの解体をお願いしたいんだが。」

「かしこまりました。それではこちらへどうぞ。」

 彼に店の奥へと案内された。
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