転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
311 / 1,052
第三章

纏い衣 氷

しおりを挟む

 サラマンダーが酸に向かって炎のブレスを吐いた次の瞬間……気化していた酸に炎が引火し、大爆発が引き起こされた。

 凄まじい熱さの爆風と衝撃が俺を襲った。

「グッ……。」

 身を守るために前に出していた両腕に焼けつくような痛みが走る。

 そして爆発によって舞い上がった火山灰を切り裂きながらサラマンダーの強靭な尻尾が現れた。
 横凪ぎに払われた尻尾の一撃をマトモに喰らってしまう。

 それにより俺は後ろにあった岩盤に叩き付けられた。

「ガハッ!!」

 何とか受け身をとることはできたが、それでも呼吸がうまくできない。
 そして悠々とこちらにサラマンダーが近付いてくる。

 大きく深呼吸をして無理矢理呼吸を整え、サラマンダーに向かって再び構えをとった。

「纏い衣……氷!!」

 右手にブリザードブレスを纏わせた。それと同時にランの魔法の援護が入る。

「ブリザードボルト!!」

 サラマンダーに向かって無数の氷の矢が放たれる。俺に気をとられていたサラマンダーだったが、流石に魔法は無視できなかったらしく、意識が一瞬俺から離れた。

「今だッ!!」

 地面を蹴り、先程ランが傷を付けた場所に冷気を纏わせた抜き手を突き刺す。

「これで終わりだッ!!」

 サラマンダーの体内へと一気に大量の魔力を流し込む、するとパキパキと音を立てながらサラマンダーの体があっという間に凍り付いていく。

「シャアアァァァァ!!シャアアァ……ァ…………。」

 断末魔の叫びを上げながらサラマンダーは全身が凍り、一体の氷像と化した。
 体の芯まで凍っているだろうから再び動き出すことは無いだろう。

「はぁ~……強かった。」

 本当に強敵だった。特にあの酸を使った爆発はヤバかった……流石にあれはヒヤッとした。

「ヒイラギ~!!大丈夫?」

 向こうからランがこちらへ向かって走ってきた。

「何とか無事だ。そっちも怪我はないか?」

「えぇ、ワタシの方は全然なんともないけど……。」

「それならよかった。」

 デートなのに怪我をさせるわけにはいかないからな。無事で安心した。

「さてと、これは一回バッグにしまっておくか。」

 万能収納アイテムの、女神のマジックバッグに氷漬けのサラマンダーをしまう。
 毎度毎度思うがよくこの大きさの物が入るな。

「さて、それじゃあ帰ろうか……おっと!!」

 いざ歩みだそうとすると、足元がふらつき転びそうになってしまった。
 今ので結構魔力を結構使ったから、その反動だろう。

「ふふっ、ヒイラギ~♪」  

 俺の脇腹をツンツンとランがつついてくる。 何を思っているのかバレバレだぞ。

「乗らないぞ?」

「え~?なんでよ~。」

「二人でいる時間を少しでも長くしたいからな。」

「えっ!?あっ……そ、そういう不意打ちはよくないわ。」

「ん?どうした?顔が赤いぞ?」

「うぅ~、ヒイラギのイジワル!!」

 ランをからかいながら俺達は火山を後にして、王都へと向かうのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く

りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます

わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。 一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します! 大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

処理中です...