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第三章
纏い衣 氷
しおりを挟むサラマンダーが酸に向かって炎のブレスを吐いた次の瞬間……気化していた酸に炎が引火し、大爆発が引き起こされた。
凄まじい熱さの爆風と衝撃が俺を襲った。
「グッ……。」
身を守るために前に出していた両腕に焼けつくような痛みが走る。
そして爆発によって舞い上がった火山灰を切り裂きながらサラマンダーの強靭な尻尾が現れた。
横凪ぎに払われた尻尾の一撃をマトモに喰らってしまう。
それにより俺は後ろにあった岩盤に叩き付けられた。
「ガハッ!!」
何とか受け身をとることはできたが、それでも呼吸がうまくできない。
そして悠々とこちらにサラマンダーが近付いてくる。
大きく深呼吸をして無理矢理呼吸を整え、サラマンダーに向かって再び構えをとった。
「纏い衣……氷!!」
右手にブリザードブレスを纏わせた。それと同時にランの魔法の援護が入る。
「ブリザードボルト!!」
サラマンダーに向かって無数の氷の矢が放たれる。俺に気をとられていたサラマンダーだったが、流石に魔法は無視できなかったらしく、意識が一瞬俺から離れた。
「今だッ!!」
地面を蹴り、先程ランが傷を付けた場所に冷気を纏わせた抜き手を突き刺す。
「これで終わりだッ!!」
サラマンダーの体内へと一気に大量の魔力を流し込む、するとパキパキと音を立てながらサラマンダーの体があっという間に凍り付いていく。
「シャアアァァァァ!!シャアアァ……ァ…………。」
断末魔の叫びを上げながらサラマンダーは全身が凍り、一体の氷像と化した。
体の芯まで凍っているだろうから再び動き出すことは無いだろう。
「はぁ~……強かった。」
本当に強敵だった。特にあの酸を使った爆発はヤバかった……流石にあれはヒヤッとした。
「ヒイラギ~!!大丈夫?」
向こうからランがこちらへ向かって走ってきた。
「何とか無事だ。そっちも怪我はないか?」
「えぇ、ワタシの方は全然なんともないけど……。」
「それならよかった。」
デートなのに怪我をさせるわけにはいかないからな。無事で安心した。
「さてと、これは一回バッグにしまっておくか。」
万能収納アイテムの、女神のマジックバッグに氷漬けのサラマンダーをしまう。
毎度毎度思うがよくこの大きさの物が入るな。
「さて、それじゃあ帰ろうか……おっと!!」
いざ歩みだそうとすると、足元がふらつき転びそうになってしまった。
今ので結構魔力を結構使ったから、その反動だろう。
「ふふっ、ヒイラギ~♪」
俺の脇腹をツンツンとランがつついてくる。 何を思っているのかバレバレだぞ。
「乗らないぞ?」
「え~?なんでよ~。」
「二人でいる時間を少しでも長くしたいからな。」
「えっ!?あっ……そ、そういう不意打ちはよくないわ。」
「ん?どうした?顔が赤いぞ?」
「うぅ~、ヒイラギのイジワル!!」
ランをからかいながら俺達は火山を後にして、王都へと向かうのだった。
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