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第三章
ランのお誘い
しおりを挟む「ねぇヒイラギ~?本当にワタシに乗らなくていいの?」
俺のとなりを並走しているランが問いかけてきた。
「あぁ、問題ない。」
「本当に?」
「本当に。」
王都を出てからというものの、このやり取りをもう何回もしている……。
というのも王都を出発する際に、彼女からこんな誘いを持ちかけられたのが始まりだった。
「ねぇヒイラギ?よかったらワタシの背中に乗って、その……火山に向かわない?」
「いや、遠慮しておくよ。」
普段ランは人間と変わらない姿でいるため、なんというかこう……背中に乗るというのは少し気が引けてしまう。
「え~……どうしてよ~。」
「い、いや……なんか申し訳なくてな。」
「ワタシがいいって言ってるんだから、別に遠慮しなくてもいいのよ?」
「そういう問題ではなくてだな……。」
「む~、わかったわ。乗りたくなったらいつでも言ってよね?」
というやり取りがあったのだ。
ランはどうしても俺に背中に乗って欲しいらしい。
まぁ、彼女に乗って空を飛ばなかったのには、もう一つ理由があるんだが……。
「ほら見えてきたぞ。」
俺は向こうに見えてきた黒い雲を指さした。
「ずいぶん雲が黒ずんでるわね、雨でも降るのかしら?」
「あの雲がランの背中に乗らなかった、もう一つの理由だ。」
あの黒い雲……恐らくは大量の火山灰や有毒ガスが含まれている。
もしランの背中に乗って飛んでいたら、必然的に吸い込んでしまっただろう。
「あの雲がどうかしたの?」
「あの雲には多分、火山灰とか有毒ガスが含まれている。もし二人で飛んでいたら、今頃あれを大量に吸い込んでいたかもしれなかったんだ。」
「なるほどね。先にそれを言ってくれれば、ワタシもちゃんと納得したのにな~?」
彼女がジト目でこちらを見てくる。
「す、すまない……あのときは少し慌ててしまってな。」
「ふふっ♪いいのよ~。ヒイラギがワタシのことしっかり考えてくれてたのがわかったから。」
キャッ♪と両手を自分の顔に当てながらクネクネするラン。
取りあえず機嫌は直った……のかな?
「ほら、ここからは気を引き締めないと危ないぞ?」
「ふふっ♪わかってるわ~。」
この火山地帯は、上の方で小さな噴火を絶えずしているようで赤い火柱が時折見える。
それにとにかく暑い……溶岩が近いからだろうか。まだ下の方にいるのにも関わらずこの暑さだ。上の方はもっと酷い暑さなのだろう。
「これはしんどいな。」
山頂付近での戦いになった場合、短期決戦で挑まないとこちらが暑さでやられてしまいかねない。
しっかり水分補給しながら上に進むとしよう。
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