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第三章
ランの感じた違和感
しおりを挟む「あくまでも10年前討伐された個体の情報ですが…サラマンダーは炎を扱うスキルを持っているようで、火属性のブレスなどの攻撃が確認されています。その他にもあの鋭い牙からは強力な酸を流し込む事ができるようです。」
炎のスキルはなんとかなりそうだが、酸はヤバそうだな。溶けるのは勘弁したい。
「そしてあの全身を覆っている鱗は、並の武器では傷すら付かないほど頑強です。ただ、魔法攻撃には弱いようで風魔法等で傷を負わせることができた…と報告書にはありました。」
「魔法か。」
纏い衣でなんとかなるか?一応あれも魔法に入ると思うんだが…試してみるしか無さそうだな。
「以上が今のところわかっているサラマンダーの特性ですね。」
「念のため聞いておくが…三年前の討伐隊のメンバーも、もちろんその事は知っていたはずなんだよな?」
「もちろんです。」
ならばしっかりと対策はしていたはずだ…。それなのに一人も生還者がいなかったというのは少し気がかりだな。
余程のイレギュラーな事態に直面したのか?あるいはサラマンダーにはまだ隠された何かがあるのか?
なんにしても用心しなければならないだろうな。
「わかった。それだけ情報が得られれば十分だ、ありがとう。」
「もう行かれるのですか?」
「あぁ、陽が暮れる前に帰ってきたいからな。」
「…御武運をお祈りしております。」
ジルに見送られ俺達は店を後にした。すると、ランがぽつりとある言葉をこぼした。
「ねぇヒイラギ?ワタシ、さっきの剥製のサラマンダーを見て気が付いた事があるのよ。」
「ん?何に気が付いたんだ?」
何か違和感でもあったのだろうか?
「さっきの剥製のサラマンダー…あれまだ子供よ?人間で例えるなら3歳ぐらいかしらね。」
「なに?」
あのデカさで子供だと?じゃあ三年前に目撃されたっていうサラマンダーはまさか……。
「三年前に目撃されたヤツはもしかして…。」
「えぇ、多分あの子の親だと思うわ。それとこれは竜種共通なのだけれど、子供を産んだ後の親はしばらく力を溜めるために深い眠りにつくの、その期間が約十年…。」
時間軸的にも間違いないな。今火山地帯を跋扈しているのは親のサラマンダーだ。
「さぞかし激昂してるんだろうな。」
眠っている間に自分の子供を殺されたのだ、怒り狂っているに違いない。
「えぇ、これは一筋縄ではいかないかも。」
俺とランは気を引き締めながら、東にあるという火山地帯に足を運ぶのだった。
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