305 / 1,052
第三章
希少な魔物たち
しおりを挟む頑丈な扉をくぐり中へ入ると早速魔物の剥製が俺たちを出迎えた。その剝製の前に立つと、この魔物について説明が始まった。
「この魔物はウデアという魔物で、迷いの森の最奥に生息しています。長い年月を生きる魔物のため体表に苔やキノコなどが生えている個体がほとんどです。肝心の肉の方ですが…柔らかく臭みがないのが特徴で、とても美味でございます。」
間近で見ると剥製なのにまるで生きているかのような生命力を感じる。それに体表に生えているキノコや苔も干からびたり枯れている様子はない。
むしろ生き生きとしているようにも見える。
「こちらの魔物も美味しいことには間違いないのですが、お求めの最高のモノではございません。」
カツカツ…と足音を鳴らしながら奥へと進む獣人の後へついていくと……。
「こちらの魔物が現在ある品物の中で最も美味しい魔物でございます。」
「これは…羊?」
そう、彼が案内してくれた最も美味しいという魔物の剥製は、毛皮がモコモコの羊なのだ。いったいこいつのどこが珍しいというのだろうか。
そう疑問に思っていると、こちらの考えを読んだのか彼は続けて説明を始める。
「今、勇者様はこの魔物のどこが珍しいのか気になっておいでですね?確かに一見ただの羊にしか見えませんが、この魔物の名前はナイトメアシープ。悪夢を再現する魔物なんです。」
「悪夢を…再現?」
「はい、この魔物は自分を狩ろうとした狩人の悪夢を読み取って、それを再現する…。そしてその悪夢が恐ろしければ恐ろしいほど、味が美味しくなるというかなり特殊な魔物でございます。」
こいつ可愛い顔してかなりえげつない事をするんだな。
それにしても悪夢を再現…か。俺の場合は間違いなくヤツが出てくるんだろうな。
「私共ではナイトメアシープは味によって段階評価をつけておりまして、最高評価は5…そして今ここで保存しておりますナイトメアシープの肉は、評価4となっております。」
なるほど、美味しさによって段階分けしてるのか。日本で言う牛のランクみたいなものだろうな。 最高レベルが無いのは残念だが、まぁ希少性が高いから仕方ないのだろう。
「そうか…。それで、今無いものも含めて最も美味しい魔物はどれなんだ?」
「やはり気になりますか?」
「あんだけ含みがある言い方をされたら、気になって仕方なくなるだろ?」
まぁ恐らくはわざとそういう言い方をして興味を引いていたのだろうがな。
「そうでございますね、それではご案内いたしましょう。こちらです。」
案内された先には更に厳重な扉があった。それほどまでに貴重なものなのか?
「こちらに保存しております剥製は、国宝級のものでございます故……お気を付けください。」
彼はガチン…と重厚な扉の鍵を解錠し中へと招き入れてくれた。
剥製でも国宝級のものか……いったい何が出てくるやら。
42
お気に入りに追加
634
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる