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第三章
魔物肉専門店
しおりを挟む軽いハプニングを経た後、俺とランは肉売り場の探索を再開していた。
何軒かお店を見て回って、品揃えにある共通点を見つけることができた。
「やっぱり主に店頭に並んでる肉は黒乱牛なんだな。」
「黒乱牛?」
「宴会の時にステーキになってた牛だ。」
そう教えてあげると、ランはイメージがついたらしくうんうんと何度か頷いた。
黒乱牛は美味しかったが……一度食べたからな、何か別の肉がいい。
そう思いながらお店を転々としていると、強く俺の興味を惹く店を見付けることができた。
「魔物肉専門店?」
そう看板に書いてある店は、外から中の様子を伺うことはできない。
なにせ扉で仕切られている上に窓がない。
「そういえば、ランはドラゴンとして暮らしていたときは何を食べてたんだ?」
ふと気になったのでランに問いかけてみる。
「ワタシ?そうね……よくワイバーンを捕まえて食べてたわ。」
おぅ……グレイス。
ワイバーンと聞いた瞬間に、脳内を高速でグレイスが横切っていった。
「美味しかったのか?」
グレイスには申し訳ないが、味は気になる。
興味本位でランに聞いてみると、彼女は嫌な表情を浮かべて言った。
「美味しくないわよ?血生臭いし、骨ばっかり。」
「ふむ……そうか。」
ランが美味しくないと言うのであれば、きっと美味しくないのだろう。
「このお店、何か珍しそうな物が置いてそうなんだが……入ってみないか?」
「ワタシは別にいいわよ?」
ランの同意を得たところで、お店の扉に手をかけ、ゆっくりと開けた。
中へ入るとたくさんの魔物の剥製が展示されていた。そしてその魔物の下には肉が並べられている。
「これはこれは勇者様、よくいらしてくださいました。」
店の奥から燕尾服のようなものに身を包んだ初老の獣人が出てきた。
「ここは魔物の肉を扱ってるところで間違いないのか?」
「はい、間違いございません。この国に生息している食用に適した魔物の肉を販売しております。」
なるほど……ここなら珍しい物もありそうだな。
「じゃあこの店で一番美味しい魔物の肉を見せてくれないか?」
「今あるものの中で一番のものでよろしいですか?」
妙に言葉に含みがある言い方だ。
「あぁ、構わない。」
「それではこちらへどうぞ。」
そして俺とランは店の奥へと案内された。奥には頑丈そうな扉があり、求めているものはこの先にあるようだ。
「ここから先は本当に希少な魔物を取り扱っている場所でございます。そのため剥製の展示のみとなります。肝心の肉の方は、厳正に温度管理された部屋で保存しておりますのでご安心ください。」
希少な魔物か……いったいどんな魔物がいるんだろうな。
沸き上がる好奇心を抑えつつ俺は扉をくぐった。
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