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第三章
不細工な魚ほどうまい説
しおりを挟む青果エリアを抜けて鮮魚エリアへと俺達は足を運んでいた。先ほどとはまた違い、魚の独特な匂いの漂うこの場所にランがぽつりと言葉をこぼした。
「ここはあれね、やっぱり生のお魚の匂いが凄いわね。」
「そりゃあ鮮魚を扱ってる場所だからな。」
並べてある魚を眺めながら、魚屋がひしめいている通りを歩いていると…。
「見て見てヒイラギ!!面白い顔の魚がいるわ!!」
はしゃぎながらランが指差していた魚は、まるでアンコウのような顔つきの魚だった。ご丁寧にちゃんと提灯も頭についている。
(お前もこの世界にいたのか。)
心の中で一つツッコミを入れながらも、俺はランにとある持論を説いた。
「意外とこういう面白い顔つきの魚って美味しいんだぞ?」
「えっ!?ホントに~?」
いまいちランは信じられなさそうな感じだが、顔が不細工という事で敬遠されがちな魚は、いざ食べてみると意外と美味しかったりするのだ。
「多分こいつにもコラーゲンがたっぷり入ってるだろうな。」
この魚のプルプルしている感じを見るに、おそらく皮の下にはコラーゲンの層があるに違いない。
「こんなに不細工なのに!?」
はっきり不細工って言ったな。ほら、ちゃんとよくよく見れば可愛く見えて……うん、来ないな。
「せっかくだから今日はアンコウ鍋でもするか。すまない、この魚をくれないか?」
魚屋の店員にアンコウのような魚を指さしてお願いすると、威勢の良い声で答えてくれた。
「あいよぉ!!勇者様もなかなかいい目を持ってるな!!こいつはこんな顔だが、ま~たうまいんだよ。」
やっぱりな。異世界でも不細工な魚はうまい説は通用するらしい。
「ちなみに、こいつの名前は何て言うんだ?」
「あぁそいつはアンゴロウってんだ。食べれねぇところはほとんどねぇからいろんなとこ食ってみてくれよ。」
アンゴロウ…ね。なんかまんまだな。
確かアンコウはもともと暗愚魚って呼ばれてたらしいな。それが方言か何かで、なまってアンコウになったとか…なんとか。
そんなうんちくを思い出しながら、俺は気になっていたことをランに問いかけてみることにした。
「そういえば昨日コラーゲン食べて体に変化はあったか?」
「鱗にちょっと艶が出た…気がするわ!!」
気がするのね…。まぁコラーゲンを摂取してもホントに効果が現れるかは、人それぞれだからな。肉由来のコラーゲンを摂取しても何も効果がなかったのに、魚由来のコラーゲンを摂取したら効果が出た…とか色々あるらしい。
「今日もい~っぱい食べるわよ~。食べるだけで綺麗になれるってホントお得よね。」
「はは、今日も夕飯は戦争になりそうだな。」
また今日もコラーゲンをめぐって女性陣の間で戦争が起きるだろうな。しかも今回は数に限りがあるから…苛烈になりそうだ。
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