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第三章

料理は科学

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「さて、まずはこいつを解体しないとな。」

 ラップを敷いた調理台の上にロックリザードを乗せた。頭から尻尾の先端まで含めればだいたい4mぐらいの大きさだろうか。大きすぎて調理台からはみ出してしまっている。

「あら、この子は…。」

「あぁ、イリスに神気を注いでもらった魔物だ。今日はこいつを料理にするぞ。」

 まずは肋骨の部分を背骨と引き剥がしていくか。そして出刃包丁でいざ解体を始めようとしたのだが…。

「ん~、骨が硬すぎる。出刃じゃ無理だな。」

 鋸もないしな……。仕方ない、アレを使うか。

 バッグから魔包丁レヴァを取り出した。魔力を込めて、再び包丁を入れてみると…。

「流石だな、余裕で切れる。」

 先ほどまで刃が通らなかった骨が豆腐を切るようにスパスパと切れる。左右両方の肋骨を外した後は、肉が一番ついている太い尻尾の部分を切り分ける。

「一回適当な大きさに輪切りにするか。」

 尻尾肉をだいたい5cm位の厚さに輪切りにする。

「後は腹の肉だな。こいつはせっかくだから骨付きのまま切り分けるか。」

 角煮にするとなれば、骨付きのままにした方が良い出汁が出る。解体を終えたところで、俺はイリスに声をかけた。

「イリス、そこのハチミツ取ってくれないか?」

「この黄色いトロッとしたやつですか?」

「あぁそれだ。ありがとう。」

 ロックリザードの肉を大きなボウルに入れ、上からハチミツをかけて全体にきっちりともみ込む。
コレが筋っぽい肉を柔らかくする魔法の工程だ。

 ハチミツにはたんぱく質分解酵素という酵素が含まれている。名前の通りたんぱく質を分解して肉を柔らかくする効果があるものだ。
 ちなみにハチミツだけでなくパイナップルやキウイフルーツ、舞茸にもこの成分は含まれている。

 この酵素を料理に使う上で一つだけ注意点がある。それは熱にとても弱い…と言うことだ。もし肉を柔らかくしたいのであれば、火を通す前によくもみこむといい。

「後はだいたい30分ぐらい置いておけばいいかな。」

 今のうちに米を研いで炊飯器に入れて…少し休憩しよう。そして米を研いで、炊飯器にセットしてコーヒーを注ぎに行こうとすると、イリスが先ほどのハチミツの入った瓶を手に取って、こちらに駆け寄ってきた。

「ヒイラギさん、このハチミツってどんな味なんですか?」

「ん?ハチミツ?とっ……ても辛いぞ?」

 少しからかおうと思い嘘を言ってみたが、イリスはクスクスと俺を見て笑い始めた。

「ふふっ、ヒイラギさんは嘘を吐くのが下手ですね。バレバレですよ。ホントはどんな味なんですか?」

「そうだな、ハチミツは多分イリスが好きな味だと思う。」

「えっ、私が好きな味ですか!?」

 そしてイリスはハチミツを舐めて甘くて美味しい…と喜んでいた。

 それにしても俺は嘘を吐くのがそんなに下手だろうか?また一つ悩みが増えたな。

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