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第三章
ご飯の時間
しおりを挟む工房を後にした俺達は王宮へと戻ってきていた。夕飯はみんなで食べると約束していたからだ。
「ヒイラギ様、ドーナ様お帰りなさいませ。」
王宮に着いてすぐにレイラが出迎えてくれた。まるでこの時間に帰ってくるのを知っていたかのようだ。
「ただいま。部屋に案内して貰ってもいいか?」
「かしこまりました。こちらへどうぞ。」
レイラの後に続いて借りている部屋へと向かう。部屋の前に着くと中からはランやシア、グレイスの声が聞こえる。
もうすでに帰っていたらしい。ドアを開けて中へと入ると、みんなの視線が一気にこちらに注がれた。
「二人ともお帰りなさい、楽しかった?」
「おかえりなさ~い!!」
「お帰りなさいっす~。」
「みんな、ただいま。」
「ただいま~、とっても楽しかったよ。」
少し頬を赤らめながらも幸せそうな表情でドーナは言った。そんな彼女の表情を見て、ランが期待を膨らませる。
「明日はいよいよワタシの番ね~。待ちきれないわ♪」
そう、明日はランとデートだ。今日ドーナと行ったところは、ランもついてきていたから今度はまだ行ったことがない所に行ければいいな。
「お兄さん、お兄さん!!」
シアが服の裾を引っ張りながらこちらを呼んでいた。
「ん?どうした?」
「シアおなか減ったの~。」
シアは自分のお腹を押さえてそう言った。もう陽が暮れ始めているから、お腹が空いてもおかしくない時間だ。
「わかった。それじゃあご飯にしようか。」
「やったぁ!!楽しみ~。」
ピョンピョンと跳び跳ねながらシアは全身で喜びを表した。それに伴って抱きしめられているグレイスが白目を剥いて今にも逝きそうだ。
「今日はどんな料理を作るのかしら?」
「今日の料理はロックリザードの角煮だ。」
「「角煮?」」
ドーナとランはそろって首をかしげた。やっぱりこの二人はなんだかんだ気があっているらしい。
「簡単に言ってしまえば、肉を柔らかく煮込む料理だ。」
料理の説明をすると、先程エノールが言っていたことをドーナは思い出したようだ。
「でもロックリザードは筋っぽい…って言ってなかったかい?」
「大丈夫だ。多分食べるときには筋っぽさなんて感じなくなるよ。」
固い肉を柔らかくする方法は何種類かある。その方法を用いれば、筋っぽい肉をとろけるぐらいまで柔らかくすることだって可能なのだ。
それにハウスキットの中には文明の利器もあるしな。それから部屋を出て、レイラに以前ハウスキットを建てた敷地に案内してもらった。
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