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第三章

ドーナの小さな願い

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 十分にボリングを楽しんだ後、ボリングの施設を後にした。

「ん~!!いやぁ~楽しかったねぇ♪」

 スッキリしたような表情でドーナは言った。そりゃあ、投げる玉が全てストライクに吸い込まれればそうなるのもわからなくはない。

「あぁ、全部のピンが倒せると気持ちがよかったな。」

 俺まぁ一回しかストライクをだすことはできなかったが、それでもなかなか倒せなかったピンが全て吹き飛んだ瞬間は、えもいわれぬ爽快感に包まれたな。

「さて、ドーナ腹減ってないか?」

 ボリングを時間を忘れて遊んでいた為に、現在はもう昼過ぎになってしまっていた。

「動いたからねぇ、お腹減ってきたよ。」

 ドーナは手を頭の後ろに回して苦笑いしながら言った。

「俺もそろそろ腹が減ってきたからな、どこか店を探して昼食にしないか?」

「賛成、獣人族の料理ってどんな感じなんだろうねぇ。」

「ドーン…って塊の生肉が出てきたりしてな?」

「それはなかなか…アタイ達人間にはキツイねぇ。」

 二人で冗談を交えた会話をしながら歩き料理店を探すことにした。すると、不意にドーナにぎゅっと手を握られる。

「さっき負けた方は言うことを聞くって言ったよねぇ……今日のデート中は手を繋いでくれるかい?」

 ドーナは顔を真っ赤にしながらそんなお願いをしてきた。

「わかった。じゃあこれで行こう。」

 そしてドーナと手を繋ぎながら、どこか昼ご飯を食べられるお店を探し始める。大衆的に人気のある料理店はきっと街の大通りにあるだろう。

 この街の大通りは王宮へと続くあの一本道だ。来た道を真っ直ぐに戻れば出られるな。ドーナと二人で子供達に案内されてきた道を戻り、大通りに出た。

「ん、昼時だからやっぱりいい匂いがし始めてるな。」

 シンやベルグは生肉を主食と言っていたが、どうやらちゃんと加熱調理の文化はあるらしい。肉の焼ける香りなどがこの辺りには漂っている。

「ヒイラギ!!あそこ人が並んでるよ。」

 ドーナが指差していたのは、一つの店に並ぶ獣人達だった。

「ホントだ、ちょっと聞いてみるか。」

 列の最後尾にいた獣人に声をかけてみる。

「すまない、ちょっと聞きたいんだが。」

「ん?おぉビックリした。勇者サマじゃないですか、どうかしました?」

「いや、ここの店に行列ができているから、何を目的に並んでいるのか聞きたかったんだ。」

「あぁ、そういうことでしたか。皆ここの店のを食べたくて並んでるんですよ」

 ほぉ~、野菜のシチューか。よくよく見てみれば、ここの店に並んでいる獣人はみんな草食の獣人族っぽい。

「そうなのか、親切にありがとう。」

 せっかくだ、獣人族の作るシチューを体験してみようか。
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