上 下
256 / 1,008
第三章

宴会の用意

しおりを挟む

「ここにあるものを全部使っていいのか?随分太っ腹だな。」

「我らは食欲が旺盛でな。このぐらい用意しておかぬと足りぬのだ。ましてや今宵の宴会は大人数……城のメイドも兵士も、民も一部招いての開催だからな。」

 ベルグ達と宴会を開いたときよりもさらに大きな規模の宴会か…。そりゃあ確かに大量の食材が必要になるな。

「私はこれ一個食べれば十分ね。」

 リリンは中ぐらいのリンゴのような果物を手にとってそう言った。嗜む程度と言っていたからそれぐらいで丁度良いのだろう。

「さて、あんまり時間も無いからな。先ずはメインの料理に使えるものを探していくか。」

 獣人族に出して喜ばれる料理……やはりそれは肉料理だ。ベルグ達には少し手の込んだ肉料理を作ったが……今回は少し趣向を変えよう。
 生の肉を焼いただけで、味がどれほど変わるのか体験してもらいたい。一応肉を焼くという文化はあるらしいが、いかに焼くという調理法が奥深いものなのか知ってほしい。

 食材を眺めていると、1つの肉の塊が目に留まった。

「この肉いいな。赤身にいい感じに脂がのってて、焼いたら美味しそうだ。」

 まじまじと肉を眺めているとシンが近づいてきて肉の匂いを嗅ぎ始めた。

「スンスン……ふむ、の肉か。」

「匂いで判別がつくのか?」

「うむ、ここにあるだいたいの肉であれば嗅ぎ分けれるだろう。」

 なにそれすごい……。

 肉を食べてどの牛だって判別することができるのはまだわかるが、匂いを嗅いだだけで判別してしまうとはな。獣人族の嗅覚恐れ入った。

「それで、黒乱牛…だったか?どんな牛なんだ?」

「黒乱牛は最近我が国でようやく安定した飼育ができるようになった牛だ。この牛は味は良いのだが気性が荒くてな…飼育が難しかったのだ。」

「それをよく飼育できるようになったな。」

「うむ、メスとオスの割合をある一定の割合にすることで大人しくなることを発見したのだ。」

 よくそんな事を見つけたな。だが、それほど意欲的に取り組んだということはよっぽど味がいいということの裏付けになる。

「あとは、このモモ肉の塊も使おうかな。」

 またシンに匂いをかぎ分けてもらうと、これも黒乱牛の肉らしい。

「次……次は芋がいいな。」

 肉の次の主食ということもあって、冷蔵庫の中には大量の芋が保管されている。サツマイモのような芋から普通のジャガイモのような芋まで様々だ。

 今回はジャガイモみたいな芋を使おう。

「後は葉野菜をいくつかと、玉ねぎと……。」

 そのほかにいくつか野菜をピックアップして、バッグへと放り込んだ。とりあえず材料はこんなもんで十分かな。

 さて、あとは存分に腕を振るうとするか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします

吉野屋
ファンタジー
 竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。  魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。  次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。 【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】  

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

処理中です...