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第三章
宴会の用意
しおりを挟む「ここにあるものを全部使っていいのか?随分太っ腹だな。」
「我らは食欲が旺盛でな。このぐらい用意しておかぬと足りぬのだ。ましてや今宵の宴会は大人数……城のメイドも兵士も、民も一部招いての開催だからな。」
ベルグ達と宴会を開いたときよりもさらに大きな規模の宴会か…。そりゃあ確かに大量の食材が必要になるな。
「私はこれ一個食べれば十分ね。」
リリンは中ぐらいのリンゴのような果物を手にとってそう言った。嗜む程度と言っていたからそれぐらいで丁度良いのだろう。
「さて、あんまり時間も無いからな。先ずはメインの料理に使えるものを探していくか。」
獣人族に出して喜ばれる料理……やはりそれは肉料理だ。ベルグ達には少し手の込んだ肉料理を作ったが……今回は少し趣向を変えよう。
生の肉を焼いただけで、味がどれほど変わるのか体験してもらいたい。一応肉を焼くという文化はあるらしいが、いかに焼くという調理法が奥深いものなのか知ってほしい。
食材を眺めていると、1つの肉の塊が目に留まった。
「この肉いいな。赤身にいい感じに脂がのってて、焼いたら美味しそうだ。」
まじまじと肉を眺めているとシンが近づいてきて肉の匂いを嗅ぎ始めた。
「スンスン……ふむ、黒乱牛の肉か。」
「匂いで判別がつくのか?」
「うむ、ここにあるだいたいの肉であれば嗅ぎ分けれるだろう。」
なにそれすごい……。
肉を食べてどの牛だって判別することができるのはまだわかるが、匂いを嗅いだだけで判別してしまうとはな。獣人族の嗅覚恐れ入った。
「それで、黒乱牛…だったか?どんな牛なんだ?」
「黒乱牛は最近我が国でようやく安定した飼育ができるようになった牛だ。この牛は味は良いのだが気性が荒くてな…飼育が難しかったのだ。」
「それをよく飼育できるようになったな。」
「うむ、メスとオスの割合をある一定の割合にすることで大人しくなることを発見したのだ。」
よくそんな事を見つけたな。だが、それほど意欲的に取り組んだということはよっぽど味がいいということの裏付けになる。
「あとは、このモモ肉の塊も使おうかな。」
またシンに匂いをかぎ分けてもらうと、これも黒乱牛の肉らしい。
「次……次は芋がいいな。」
肉の次の主食ということもあって、冷蔵庫の中には大量の芋が保管されている。サツマイモのような芋から普通のジャガイモのような芋まで様々だ。
今回はジャガイモみたいな芋を使おう。
「後は葉野菜をいくつかと、玉ねぎと……。」
そのほかにいくつか野菜をピックアップして、バッグへと放り込んだ。とりあえず材料はこんなもんで十分かな。
さて、あとは存分に腕を振るうとするか。
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