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第三章

シンの想い

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「何か策があるのか?」

「あぁ、だがこの策はシンにとってはツラいかもしれない。それでも聞くか?」

 そう聞くと真剣な表情でシンは大きく頷いた。彼なら頷くとは思っていたが、首を横に振らなくてよかった。

「そうか…なら教えるよ。俺が考えている策っていうのは……。」

 俺はシンにリリン達との同盟の事について話した。彼女達がもう死の女神に従う意思が無いこと……そして今回死の女神の命令で獣人族を魔物に襲わせたが、それについても深く反省していること等も合わせてシンに伝えた。

 彼はこちらの話を遮ることなく、時々頷きながら話を聞いていた。そして話し終えるとシンは口を開いた。

「ふむ…ヒイラギが我にとってツラい策と言っていた理由がよくわかった。……が、ヒイラギは1つ勘違いをしているな。」

 シンはこちらをじっと見てニヤッと笑った。

「ヒイラギが思っている通り、我は悪と手を組むのは御免だ。だが、我が思う悪とは心まで悪に染まっておる者。リリンは妹を守るために我らを攻撃したと言っていたな?確かに我らの同胞を殺したのは変えられぬ事実……だが彼女たちを無理矢理動かしていた者こそ、真の悪だと我は思う。」

 シンのその予想外の言葉に一瞬固まってしまった。まさかシンも同じ考えだとはな……一番被害を受けた国の国王なのにどこまで器が大きいんだ。
 彼の言葉を聞いたあと、思わず緊張の糸が切れフッと笑みがこぼれてしまった。

「それじゃあ…。」

「うむ、我らの同胞を殺したを打ち倒すために、我もその同盟に加わろう!!」

 シンはそう言うと立ち上がりこちらへと歩いてきて手を差し出した。

「シンが話のわかるやつでよかったよ。」

 俺はそう言ってシンの大きな手を握り返した。

「さて、それでは明日にでもリリンの住処に行くとするか。顔を見て話しをしてみたい。」

「あぁ、それなら必要ないぞ。。」

 俺の言葉を聞いても、シンは理解できていない様子だった。すると、肩から提げていたバッグから一人の少女が飛び出した。

「初めまして、獣人族の王。私がリリンよ。」

「むっ!?そなたがリリンか!?ヒイラギのバッグの中に潜んでいたのか。」

 シンの前に姿を現したリリンは、彼に向かって深く頭を下げる。

「今回は妹のためとはいえ獣人族を手にかけてしまったこと、本当に反省しているわ。ごめんなさい。」

「頭を上げるのだ。そなたは死の女神に無理矢理やらされていたのだろう?」

「でも、私が魔物を操っていたことに変わりはないわ。」

「むぅ、だからだな。そなたが責任を感じるのはわかる。だが、今回のことに関して我は死の女神本人が全面的に悪いと思っているのだ。しっかりと謝罪も受け取った故、もう頭を上げて良い。」

 そう言うとシンはリリンに手を差し伸べた。申し訳なさそうに頭を上げた彼女はその手をそっと握り返した。

「うむ、これで同盟成立だな。」

 シンの説得も成功し、今ここに死の女神を打倒するための同盟が結ばれたのだった。
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