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第三章
ヒイラギの美味しさ
しおりを挟むペロペロ…ペロペロ……。
ん、なんだ?肩の辺りがくすぐったい。深く沈んでいた意識がその異変によって徐々に覚めていく。
「またこの部屋か。」
目が覚めると俺はまたさっきの部屋のベッドに寝かされていた。かけられている毛布が妙に盛り上がっている。不思議に思いながら毛布をめくると…。
「んにゃっ!?お兄さんもう起きた?」
毛布をめくると、フレイの噛み痕がある肩をペロペロと舐めているシアがいた。
「シア、何してるんだ?」
「痛そうだったからペロペロすれば治るかなって思ったの。」
よく見ると噛み痕はまだ少しだけ血が出ていた。シアはそれを心配して舐めていたらしい。
「ありがとな。」
シアの頭を撫でながらそう言った。それから少しすると、部屋の扉がコンコンとノックされた。
「あ、あの…ぼ、ボクだけど入ってもいいかな?」
「ん?フレイか、入っていいぞ。」
フレイはそろっと扉を開けて中へと入ってきた。
「あ、あのっ…さっきはごめ……。」
「さっきのことなら気にしてないから大丈夫だ。」
「ふえっ!?な、何で言いたいことがわかったの!?」
「顔にそう書いてあるぞ?」
そうからかうように言うと、フレイは自分の顔をペタペタと手で触り始めた。そして鏡でちゃんと確認すると、再びこちらを振り向く。
「か、顔にそんな事書いてないよ!?」
「言葉のあやだよ、感情が表情に出てることをそう言うんだ。」
フレイのそんな姿を見て、笑いをこらえながら教えてあげると、彼女は少しむすっとしながらベッドの上に腰掛けた。
「ふーん、ボクが知らない言葉を使ってからかうのは良くないと思うなっ。」
「悪かったよ、まぁさっきのことはホントに気にしてないから安心してくれ。」
からかわれたことにムッとしているフレイをそうなだめた。するとあっさりと機嫌をなおしてくれたようで…。
「そっか、安心したよ。」
「怒ってると思ったか?」
「うん、あの時は久しぶりにとっても美味しい血を飲んだから、ついつい夢中になっちゃって。」
彼女はとても申し訳なさそうに言った。
「まぁ、それだけ体力が落ちてたってことだな。…それで一つ聞きたいんだが、俺の血って吸血鬼からしたら美味しいのか?」
「それはもう…血液に含まれてる魔力の純度が高くて、濃厚で甘くて、すっごく美味しかったよ!!」
やはり吸血鬼の味覚は少し特殊なようだ。血液が甘いなんて考えられないからな。
あの時の味を思い出して、今にもよだれが垂れそうになっているフレイ。
すると横からじー…っと視線を感じたので振り返ると、そこには指を咥えたシアがいた。
「お兄さんって美味しいの?」
シアのその問いかけで我に返ったフレイが焦って訂正する。
「えっ!?えっとね、うん…ボクにとっては美味しく感じちゃうだけ。多分キミが食べても美味しくないと思う。」
「そうなんだ…残念。」
「俺は美味しくないかもしれないが、その代わり毎日美味しいの食べさせてあげてるだろ?」
「うん!!」
シアの頭を撫でていると隣でボソッとフレイが何かを呟いていた。
「いいなぁ、ボクもあんな風に…。」
「何か言ったか?」
「えっ!?ううん、なんでもないよ!!」
そんなやり取りをしていると、またしても部屋の扉がノックされた。
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