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第三章

初めての吸血体験

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 上着を脱いで、椅子の背もたれに胸を預ける。

「これでいいか?」

「うん、大丈夫ちょっと触るね。」

 ピタっと背中にフレイの手が触れる。肌がとても白かったため体温も低いのかと思ったが、そんなことは無いようだ。ちゃんと人肌程度のぬくもりを感じる。

「すごい心臓がバクバク動いてる。緊張してるかな?」

「そりゃあ女の人に裸を見られたらこうなるさ。」

「そっか、えへへっ…。ヒイラギさんにボクはちゃんと女の人って見られてるんだ。」

 くすくすとフレイは嬉しそうに笑いながらそう言った。

「それじゃあ最初ちょっとだけ痛いかもしれないけど…準備はいい?」

「あぁ大丈夫だ、始めてくれ。」

「それじゃあ、はむっ……。」

 フレイが肩に口を当てた瞬間、痛みよりも熱さを感じた。そして何かが吸われていくような感覚がする。
 これが吸血される感覚か、献血よりもよっぽど血を吸われている感じが強いな。

 ごくごくとフレイは喉を鳴らしながら俺の血を飲んでいる。美味しいものなのだろうか…吸血鬼だから特殊な味覚なのかな?

 スッポンの生き血を焼酎で割ったものは口にしたことがあるが、あれは好き嫌いが分かれる味だったのを覚えている。

「んくっ、んくっ……ぷはぁ!!」

 何分かするとフレイが肩から口を離し、トロンと蕩けた表情を浮かべている。そう、まるで酔っ払ったかのような感じのあの顔だ。

「も、もういいのか?」

「も、もうちょっとだけ…いいかな?」

「好きにするといい。」

 そしてフレイが再び血を吸い始めて30分ほどが経過した。な、なんだろう…すごい頭がボーッとしてきたぞ。

 流石にそろそろ……と、フレイに声をかけるが……。

「んふ~、んくっ…んくっ……。」

 すっかり夢中になっているようで、聞こえていないようだ。

(ま、不味いぞ……。だ、誰かいないのか?)

 助けを求めようとするが、俺とフレイ以外はこの部屋にはいない。てか紅茶淹れに行ったライラはまだ来ないのか!?

 頼みの綱のライラが来るのを待っていると、部屋のドアが開き頬がパンパンに腫れたリリンが入ってきた。

「うぅ~痛いわ。フレイったら酷いことするんだから。」

 リリンは腫れた自分の頬をスリスリと手でさすりながらぼやいていた。

(こっちはそれどころじゃないんだ!!早く気付いてくれ!!)

 そして俺は朦朧とする意識のなかで彼女の名前を呼んだ。

「り、リリン…。」

「んぇ?えっ?ちょ、ちょっとフレイ!?彼が干からび始めてるわよ!?」

 ようやくこちらに気付いたリリンはフレイを俺から引き剥がしてくれた。

(な、何とかなった…か。)

 そこで俺の意識は闇の中に沈んでいった。
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