転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
246 / 1,052
第三章

初めての吸血体験

しおりを挟む
 上着を脱いで、椅子の背もたれに胸を預ける。

「これでいいか?」

「うん、大丈夫ちょっと触るね。」

 ピタっと背中にフレイの手が触れる。肌がとても白かったため体温も低いのかと思ったが、そんなことは無いようだ。ちゃんと人肌程度のぬくもりを感じる。

「すごい心臓がバクバク動いてる。緊張してるかな?」

「そりゃあ女の人に裸を見られたらこうなるさ。」

「そっか、えへへっ…。ヒイラギさんにボクはちゃんと女の人って見られてるんだ。」

 くすくすとフレイは嬉しそうに笑いながらそう言った。

「それじゃあ最初ちょっとだけ痛いかもしれないけど…準備はいい?」

「あぁ大丈夫だ、始めてくれ。」

「それじゃあ、はむっ……。」

 フレイが肩に口を当てた瞬間、痛みよりも熱さを感じた。そして何かが吸われていくような感覚がする。
 これが吸血される感覚か、献血よりもよっぽど血を吸われている感じが強いな。

 ごくごくとフレイは喉を鳴らしながら俺の血を飲んでいる。美味しいものなのだろうか…吸血鬼だから特殊な味覚なのかな?

 スッポンの生き血を焼酎で割ったものは口にしたことがあるが、あれは好き嫌いが分かれる味だったのを覚えている。

「んくっ、んくっ……ぷはぁ!!」

 何分かするとフレイが肩から口を離し、トロンと蕩けた表情を浮かべている。そう、まるで酔っ払ったかのような感じのあの顔だ。

「も、もういいのか?」

「も、もうちょっとだけ…いいかな?」

「好きにするといい。」

 そしてフレイが再び血を吸い始めて30分ほどが経過した。な、なんだろう…すごい頭がボーッとしてきたぞ。

 流石にそろそろ……と、フレイに声をかけるが……。

「んふ~、んくっ…んくっ……。」

 すっかり夢中になっているようで、聞こえていないようだ。

(ま、不味いぞ……。だ、誰かいないのか?)

 助けを求めようとするが、俺とフレイ以外はこの部屋にはいない。てか紅茶淹れに行ったライラはまだ来ないのか!?

 頼みの綱のライラが来るのを待っていると、部屋のドアが開き頬がパンパンに腫れたリリンが入ってきた。

「うぅ~痛いわ。フレイったら酷いことするんだから。」

 リリンは腫れた自分の頬をスリスリと手でさすりながらぼやいていた。

(こっちはそれどころじゃないんだ!!早く気付いてくれ!!)

 そして俺は朦朧とする意識のなかで彼女の名前を呼んだ。

「り、リリン…。」

「んぇ?えっ?ちょ、ちょっとフレイ!?彼が干からび始めてるわよ!?」

 ようやくこちらに気付いたリリンはフレイを俺から引き剥がしてくれた。

(な、何とかなった…か。)

 そこで俺の意識は闇の中に沈んでいった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...