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第三章
シアに起きた異変
しおりを挟む一度各々の部屋に戻り、少し休憩した後で俺の部屋に集まることにした。
この国でのこれからの予定を話し合うためだ。
ガチャッと部屋のドアを開けて中へ入ると……。
「お兄さん!!果物があるよ!!」
「甘い匂いがするっす~。」
シアとグレイスがテーブルの上に置かれていた果物を見つけてはしゃぎ始めた。
どうやら風呂に入っている間に用意してくれたらしい。
見たことのある形の果物がたくさん並べられている。それとは別に、果物が盛られた皿の横になにやら密閉された容器に入ったドライフルーツのようなものがある。
「これはなんだ?」
パカッとふたを開け、1つ手に取って眺めてみる。
「見たこと無い形だな。匂いは……少し独特の香りがする。食べられるのか?これ…。」
ドライフルーツのようなものを観察していると、クイクイッと服の裾をシアに引っ張られた。
「ん?シアどうし…………。」
「お兄しゃぁ~ん、シア……シアそれ欲しい!!」
急にゴロゴロと喉をならし、服に体を擦り付けてきた。表情はとろん……と蕩けており、何やら様子がおかしい。
「し、シア?どうしたんだ?様子がおかしいぞ。」
「わからないけど~、お兄さんが持ってるそれの匂い嗅いでると体がポカポカしてくるの~。だからお兄さん、それシアにちょうだい?」
「こ、これってまさか……。」
予想が正しいのか確かめるために、部屋の前にいるであろうレイラの元へ確かめに行った。
その間シアには取りあえず柑橘類の果物を剥いて、そっちを食べてもらっている。
ガチャッとドアを開けて周りを見ると、部屋のすぐ横にレイラが待機していた。
「ヒイラギ様?いかがなさいましたか?」
「あぁ、聞きたいことがあったんだ。」
「なんでございましょう?」
レイラに先ほどシアが欲しがっていたものを見せた。
「これって乾燥させたマタタビの実か?」
「よくご存じでございますね。猫の獣人のお子様がいらっしゃいましたので、お食べになるかと思ってご用意させていただきました。」
「やっぱりかぁ……。」
これがマタタビの実であれば、シアがあんなになったのも説明がつく。猫はマタタビの匂いを至近距離で嗅ぐ……もしくは口にすると泥酔する時がある。
まさかシアにも効果があるとは思ってなかった。
「わかった、ありがとう。それが聞きたかったんだ。」
「また何かございましたら、お声がけください。」
再びドアを閉め、すぐに手に持っていたマタタビを容器に戻して、バッグのなかに放り込んだ。
こ、これで大丈夫だろう……多分。
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