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第三章
廊下は走らない
しおりを挟む宴会については、しっかりとシンに話をつけて俺はメイドのレイラに再び部屋まで案内してもらっていた。
部屋への道を歩いていると、向こう側からドーナ達が歩いてきているのが見えた。
「あっ!!お兄さんだ!!」
廊下の奥から小走りでシアがこちらへ向かって走ってきた。
一瞬身構えたが、以前のようにステータスを制御することができずに、殺人クラスの突進をすることはなかった。
そして俺のもとへたどり着くと、ぎゅっと腰に腕を回して抱きついてきた。
「えへへぇ~捕まえた!!」
グリグリと頭を押し付けてくる。
そんなシアの頭を撫でているとドーナ達もこちらへ向かってきた。
「シア、廊下は走ったら危ないんだから気を付けるんだよ?」
そうドーナがシアに言い聞かせたが……その横でクスクスとランが笑う。
「ドーナ、あなたが言ってもあんまり説得力ないわよ?」
まぁ確かにな、ドーナはギルドの扉を突っ走りながら蹴破ったりしてた実績がある。
「う、うるさいねぇ。」
「ふふっ、でも~ホントのことじゃない?」
ランがドーナをからかっている光景を見ながら、俺からもシアに言っておく。
「いいかいシア、ここで走ってメイドさん達にぶつかったら危ないだろ?だからこういう廊下とか家の中ではなるべく走らないようにな?」
「うん、ごめんなさい。」
しゅん…としてしまったシアの頭にポンと手を置いた。
「落ち込まなくていい、次やらないようにすればいいんだ。」
「うん、シア気を付ける!!」
「それでいい。」
同じ事を二回やらなければそれでいい。俺はそう思う。
だって一度目は誰だってやってしまうものだ。なぜなら知らないから……。
そして一度目を経験しているからこそ、二度目をやらないように自分で意識することができる。
だから一度目の失敗をしたときに過度に怒るのは、あまりよろしくないと思う。
初めて失敗をした時にすごい怒鳴られたら、誰だって精神的に参ってしまうからな。
失敗は成功のもと…って言葉もあるぐらいだ。失敗して学んでいけばいい。
「ほら、ランもあまりドーナをいじるんじゃない。」
シアと話している横で、ずっとドーナをいじっていたランを止める。
「ふふっ、ごめんね~面白かったからついつい。」
「何も言えなかった自分が恥ずかしくなったよ……全く。」
ペロッと舌を出しながら謝るランを、少し涙目で睨み付けるドーナ。
これはあとが怖いな…ランがやらかした時に盛大にドーナが反撃しそうだ。
うぅ~と唸りながらランを睨みつけるドーナを見てそう思うのだった。
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