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第三章

獣人族の食文化

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 獣人族の未来のことを考えた話を終えると、シンは一つ息を吐いて言った。

「さて、まぁ堅苦しい話は終わりにするとしよう。今は疲れを癒そうではないか?」

 その表情は先程まで浮かんでいた真剣な表情ではなく、ただ今を楽しんでいる表情だった。

「そうだな、今はゆっくりしよう。」

 俺は再び肩まで湯船に浸かり、体を芯まで暖めることにした。

 よくよく考えてみれば、この世界に来てからというものの風呂には浸かったことがないな。
 ハウスキットにはシャワールームまでついていたので、今まではそれで体を洗い流すだけだったが、やはり風呂はいいものだ。

 ほっこりとしながら湯船に浸かっているとシンが話しかけてきた。

「時に、これはベルグから聞いたのだが…ヒイラギがベルグ達に振る舞ったという料理は今まで食べたことが無いぐらい美味なるものだったと。」

「ベルグがそんなことを?」

「うむ、もう普通の生肉は食う気にならん…とまで言っていたな。」

 ん?生肉……やはりこの国の食文化は…。

「この国は生肉が主食なのか?」

「うむ、何か変か?」

 変もなにもまさかそんなに食文化が発達していないとはな。この国に来て一番の驚きかもしれない。

「うまいのだぞ?新鮮な生肉は…。」

 生の肉なんか食べて腹を壊したりしてないのだろうか。あれか?獣人族は胃袋が強いのかな?

 気になったので彼に聞いてみることにした。

「今まで生肉を食べて腹を壊したりしたことは無いのか?」

「うーむ……そうだな。」

 腕を組み、シンはうなり始めた。過去の出来事を思い出しているらしいが、即座に無いと言わなかったということは……だ。

「あぁ、思い出したぞ。以前この国にという魔物が大量発生したことがあってな。」

「聞いたことがない魔物だな。」

「それもそうだろう。この国にしか生息していない魔物だからな。それにとても珍しい鳥だったのだ。」

「それで?」

「それで、そんなに珍しい鳥が大量発生したものだから食べてみようとする者が後をたたなくてな。」

「で、食べた人が皆腹を壊したと?」

「うむ。」

 がっつり食中毒じゃないか。後でちゃんとした調理というものをこの国に広めないとな。
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