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第三章
形勢逆転
しおりを挟む俺たちが参戦してから急激に戦況は変化し、まさに形勢逆転の一途をたどっていた。
「皆のもの!!敵が崩れている今が好奇だ!!攻め続けるのだ!!」
「「「「オオオォォォォォォ!!」」」」
シンの号令によりさらに獣人族の兵士達の士気は上がり、いよいよ戦況が傾き始めた。すると、戦況が傾き始めたことにより魔物達の中で異様な事が起こり始めた。
俺が目の前の魔物を打ち倒し、次の魔物に狙いを定めると……その魔物は俺に背を向けて逃げ出したのだ。
しかしその次の瞬間また異変が起こる。
「グギュルルルル!?グッブッ……。」
その魔物は逃げている途中で足を止め胸を押さえて苦しみ始めると、最後には泡を吹いて死んだ。
ベルグに化けていた魔物と同じ死に方だ。そして、この魔物と同じように戦場から逃げ出そうとした魔物はことごとく死んでいった。
恐らく最後に残った生存本能的なものだと思われる。このままでは殺される事を悟り、本能的に逃げ出したのかもしれない。
魔物の自滅が多発したことにより、残された魔物はもう数少なくなっていた。
「二人とも!!まだ行けるか?」
すぐ後ろで戦っていた二人に声をかけた。
「全然余裕よ!!」
「アタイも大丈夫だよっ!!」
「よし、ならこのまま一気に行くぞ!!」
少なくなった魔物に一気に畳み掛けた。ただでさえ劣勢になっている所に追い討ちはかなり効果的だった。
ほとんどの魔物が動くことができずに狩られていく。
そして、俺は最後の一匹の魔物の息の根を止めた。魔物の全滅を確認したシンが大声で勝ち鬨をあげる。
「皆よ、よく耐えた!!我々の勝利だ!!」
「「「「オオオォォォォォォ!!」」」」
兵士達の大きな歓声と共に魔物との戦闘は幕を閉じた。兵士達が喜んでいる最中、俺は常に背中を守ってくれた二人に声をかけた。
「二人とも怪我はないか?」
「大丈夫よ~、でも汗かいちゃったから早く水浴びしたいわ。」
「アタイも怪我はないよ。前で戦ってくれたヒイラギのおかげでね。」
二人とも土埃で汚れてしまってはいるが、怪我はないようで安心した。お互いの無事を確認していると、シンが何名か兵士を引き連れてこちらへやって来た。
「ヒイラギ、此度は誠に助かった。獣人族を代表して礼を言わせてもらう。」
シンはそう言って頭を下げた。それに続いてシンの周りの兵士達も頭を下げる。
「大丈夫ですよ。今回は誰も犠牲が出なかったようで良かったです。」
「うむ、まったくだ。それで……だな、この功績を称えてこの後兵士達にヒイラギを紹介したいのだが……。」
「人間の俺が出ていっても大丈夫ですか?」
「そこは我に任せるのだ。」
少々不安だが……一国の王がそう言ってるんだから身を任せてみるか。自信満々に歩くシンのあとに続いて兵士達の元へと向かうのだった。
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