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第三章

獣人族の王

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 ドンドンと強くハウスキットの扉をノックする音で俺は目覚めた。朝日がさしているためもう朝なのは間違いない。
 しかし、こんなに朝早くに何の用だろうか…あくびをかみ殺しながら扉を開けると、そこにはベルグがいた。

「いったいどうしたんだ?こんな朝早くに…。」

「おう、すまねぇな。いや実は今な……。」

 ベルグが事情を説明しようとすると、その後ろから一人の獅子の姿の獣人が姿を現した。

「ベルグよ、この人間が例の恩人殿か?」

「し、シン様っ……はっ、その通りです。」

 ベルグはシンという獣人の横に跪きそう述べた。兵士達の指揮官だったベルグが頭を下げ、跪く人物……つまりは獣人族のなかでもトップクラスに偉い人物なのだろう。

 すると突然シンという名の獅子の獣人は、俺にバッと頭を下げた。その姿にベルグはとても驚き戸惑っていた。

「人間の恩人殿、此度は助かった。皆から礼は言われたとは思うが、我からも受け取ってくれ。」

「い、いやそんなたいした事じゃないから。取りあえず頭を上げてくれ。」

「……ふむ、ベルグの言うとおり伝承に伝わる人間の印象とはまるで違う。」

 頭を上げたシンという獣人はまじまじと俺の顔を見てきた。俺より身長がかなり高いため少し怖い。猛獣に目の前で品定めされているかのようだ。

「あ~っと、ベルグ…この人は?」

 俺は目線だけをベルグに送りそう聞いた。

「その御方はな……。」

「おっとベルグよ、その質問には我が答えた方が早かろう。」

 ベルグが答えようとしていたのを遮り、シンという獣人は名乗りを上げた。

「我はこの国の、名をシンという。差支えがなければそなたの名も聞いておきたい。いつまでも人間の恩人殿では呼びにくくて敵わぬ。」

 突然の獣人族の国王の来訪に、荒ぶる心を静めながら取りあえず俺も自己紹介をすることにした。

「俺はヒイラギ……ヒイラギ クレハです。」

「おぉ、ヒイラギ殿というのか。それにしても、ずいぶん我らの言葉が達者なようだ。」

 流石に気が付いたか、ベルグ達は全然気がつかなかったんだが。それほど俺を観察しているということなのだろうな。
 表面上はフレンドリーに接してきてはいるが、かなり警戒はしているようだ。

「そういう便利なスキルを持っているんですよ。」

 隠すほどでもないスキルだからな、教えておいても構わない。嘘をついて変に疑われるのも嫌だしな。

「まぁ、取りあえず中へどうぞ?話はそこで。」

「うむそうしよう。」

 そして彼らを中に招き入れシンと話をすることにした。
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