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第三章
シアとベルグ
しおりを挟むベルグに案内してもらい、食料庫に連れてきてもらった。さてさて、どんな食材があるのやら。
食料庫の扉を開けると、中には大量の食材が入っていた。中には少し傷んでしまっているものもあるが、これだけあれば全員分まかなえるだろう。
「ここの敷地借りるぞ?」
「あぁ、好きに使っていい。」
俺は食料庫のとなりにハウスキットを出現させた。
「おぉ!?なんだこいつは!!」
「俺たちの家……みたいなものだ。それとさっきは他の兵士がいたから紹介できなかったが、もう二人俺には仲間がいるんだ。」
ベルグしか獣人族がいない状況になったので、マジックバッグの中で待機していたシアとグレイスを呼び出した。
バッグから出てきたシアはベルグを見るなり俺の後ろに隠れてしまった。
「お、おいヒイラギ。そ、その子供は?」
「先に誤解を解いておこう。この子は体毛が黒いという理由だけでこの獣人族の国から追い出され、人間の国に追放された。そしてたまたま森をさ迷っている所を俺が保護したんだ。」
「黒い体毛を追い出す仕来りか。そいつは昔の言い伝えだ。未だにそれをしているところがあったとはな。」
「昔の言い伝え?今はどうなんだ?」
「今はそんな差別なんか無い。現在の王に変わってから、そういった差別的なものは全て消えたと思っていたんだがな。」
そう言うとベルグはシアと同じ目線に腰をおろして、優しく語りかけた。
「嬢ちゃん、安心してくれ。オレ達は体毛が黒いからとか、そんなに理由で差別なんかしたりしない。約束する。」
そう言われたシアは俺の顔をじっと見てきた。信じても大丈夫なのかまだわからないらしい。そんな簡単に過去のトラウマは消えないから仕方のないことだ。
「シア、大丈夫だ。ベルグはいいやつだ。それに俺がついてる、何かあったら絶対に守ってやるからな?」
「う、うん。」
するとベルグは少しでも距離を縮めるためシアと会話をしようとした。
「お嬢ちゃん。おじさんはベルグっていうんだ。お嬢ちゃんのお名前も教えてくれないか?」
「……シア。」
少し怯えながらもシアは自分の名前を答えることができた。
「そうか、シアちゃんっていうのか。」
コクコクとシアは首を縦に振り、肯定の意思を示した。
「おじさんも、おじさんの友達も皆シアちゃんの味方だから、安心してほしい。シアちゃんの悪口言ったやつはおじさんがぶっ飛ばしてやるからな!!」
するとシアは少し考えた後にゆっくりと首を縦に振った。これを機に少しずつトラウマを克服できればいいんだが。
シアを落ち着かせるためにゆっくりと撫でながら、そう願うのだった。
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