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第三章

魔物ヲ率イル者

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 残った魔物を片付けていると、何やら嫌な気配がこちらへ迫ってきているのに気が付いた。

「ん?ちょっと強いのが来たかな。」

 嫌な気配が迫ってくる方向へ意識を集中させた。すると薄暗い森の中から、一匹の大きな魔物にまたがった黒い獣人族の女性が姿を現した。

「巨大な魔力の反応を感知して来てみれば……あの方の魔物がこんなにやられてしまっている。貴様がやったのか?人間……。」

「そうだと言ったら?」

「殺すまでだ。」

 瞬きはしていない。確かに目は見開いていたはずだ……だが彼女は突然魔物の背中から消えた。

「なッ!?」

 直後背後から強烈な殺気を感じる。

 即座に体を最大限にかがめると同時に足払いをかけるが、それを空を切っただけだった。

「無駄だ、届かない。」

 ぽつりと言って、彼女はまた消えた。いったいどういう仕組みなんだ? 目を瞑り、辺りの気配を探るが気配を微塵も感じることができない。

 するとまた背後で声が聞こえた。

「多少肉弾戦は得意なようだが……。」

 バッと後ろを振り向くが、そこにはもう誰もいない。

「どこを見ている?戦闘中に余所見とは、随分余裕だな人間?」

 今度声がしたのは再び魔物の上からだ。彼女はクスクスと笑みを浮かべながら、こちらを見ていた。

 まいったな……いったいどうなってるんだ?打開策が全く見付からない。

 打開できない状況に冷や汗が頬をつたう。

 あの移動の仕組みがわかればいいんだが……って、そうか、この手があったな。脳内でそのスキルを強くイメージして発動させた。

(鑑定)

 すると目論見通り、目の前に彼女のステータスが表示された。あの奇妙な移動方法の正体……それはスキルの項目に答えがあった。

(なるほどな、とんでもないスキルもあるものだ。)

「さっさとあそこに群れている獣人族どもを始末しなければならないんだ。遊びはこれで終わりにしよう。」

 そしてまた彼女は目の前で消えた。

 彼女が消えたことを確認して、俺は自分の影が正面にくるように立ち位置を変え受けの構えをとった。

(さぁ、来い!!)

 目の前の自分の影に集中する。すると次の瞬間、一瞬影がぶれ彼女が影から飛び出してきた。

「見破ったぞ!!」

「なにっ!?」

 驚く彼女の右手を掴み影から引っ張り出す。そして背中から地面に叩きつけた。

「ぐあっ、くぅっ!!」

 結構な勢いで叩きつけられたのにもかかわらず、彼女は動物的な動きで体勢を立て直すと、こちらを睨みつけてくる。

「さ、反撃開始だ。」
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