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第三章
獣人族の国の惨状
しおりを挟む休憩をはさみながら何時間か進んだころ、やっと何の変化もなかった通路に変化が現れる。
「おっ?あそこから光が差し込んできてるぞ。」
暗いから光が差し込んでいるのがよくわかる。あそこが出口かな?
その光の射し込んでいるところへと向かって進んでいると、目の前に階段が現れた。その階段を登りきると扉が一つあった。
「あっ、シアここから入ってきたの。」
シアは扉を指さして言った。ここが獣人族の国への入り口か。
ここを抜ければ、獣人族の国に入れることは間違いないのだが……俺の第六感が全力で警笛を鳴らしている。
扉の向こうからかすかに香る肉が焼ける匂い、そして血の匂いと腐臭……。
「俺が先に行って様子を見てくる。何か様子が変なんだ。みんなは一回安全が確保できるまでここに居てくれ。」
「気を付けてね?」
「あぁ。」
目の前にある扉を開けて先に進む。
「ここは、誰かの家……だったのか?」
扉を抜けた先は、家の面影が残る焼け焦げた廃墟だった。辺りを見渡すと、同じように焼け焦げた家が複数あるのが見て取れる。
どうやら集落があった場所のようだ。
外を歩いてみると、そこら中に獣人族と思われる遺体が倒れている。焼け焦げてしまい、人だという原型しかわからない死体や、腐敗が進み虫がたかっている死体もあった。
衝撃的な光景だ。
目の前の惨状に圧倒されていると、近くでパキッと木が折れるような物音が聞こえた。家の陰に隠れその音のした方向を観察してみると……。
「カロロロロロ。」
変な鳴き声とともに一匹の魔物が現れた。いろいろな動物の骨をかき集めたような、不気味な魔物…その魔物は死体に近づくと腐肉を貪り始めた。
グジュグジュと咀嚼し骨は自分の体にくっつけている。
「あんな魔物がうろついてるんじゃ、みんなを呼べないな。」
手をその魔物へと翳し、あるスキルを発動させる。
「フレイムブレス。」
撃ち放たれた業火が骨の魔物を襲う。フレイムブレスは一瞬で魔物を消し炭にしてしまう。
「これで倒したみたいだな。」
まだ簡単に倒せるレベルの魔物だ。しかしほっとしたのもつかの間…。
「「「「「カロロロロロロロ。」」」」」
仲間の異変に気が付いた、同じ魔物がわらわらと這い出てきた。取りあえず安全を確保するために殲滅しないとな。
一匹一匹始末するのも面倒なので、最大出力のフレイムブレスでまとめて焼き払うことにした。いつもより多めに力を込めるイメージでスキルを使う。
「消えろ。」
今度放たれたフレイムブレスはとてつもなく太い熱線となり、集まっていた魔物を一瞬で灰にした。
その後死体が野ざらしになっているのはかわいそうだったので一人一人火葬した。これで少しでもあの世でうかばれるといいんだが……。
風で運ばれていく灰を見てそう願うのだった。
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