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第ニ章
悲劇の一幕
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「来るなッ、来るなあぁぁぁ!!」
そう叫ぶ獣人族の男の周りには、黒い瘴気を纏った大小さまざまな大きさの魔物が動きひしめいていた。
ある魔物はいまだ鮮血があふれ出ている腕を美味しそうに咥え、またある魔物は地面に転がっている死人のはらわたを喰らっている。
そしてまたある魔物は男のように生きたエサを見つけて歓喜しているようだ。
そんな地獄のような光景の中、一人の女性が大量の魔物の群れの中から姿を現した。
黒い髪の毛……そして特徴的な耳と尻尾。そう、獣人族で忌み嫌われている存在である黒い毛並みの獣人だ。
その女性はその一人生き残った獣人の男に問いかけた。
「一つ質問だ。少し前に私と同じ毛並みの子供が生まれたはず、その子の居場所を教えれば私は貴様の命を奪わないと約束しよう。」
「ほ、本当か!?あ、あのガキなら今は人間の国にいるはずだ!!嘘じゃない信じてくれ!!」
精一杯の命乞いをする男……少しでも助かる希望にすがるべく必死だ。
「そうか、やはり救いようがないなこの種族は……。」
男の言葉に心底呆れた様子で、大きなため息を吐く黒い獣人の女性。すると彼女は後ろに控えている魔物の群れに声をかける。
「こいつはお前たちの好きにしろ。」
無慈悲なその言葉に男の表情が青ざめる。
「そ、そんな約束がちがう!!」
「確かに私は貴様の命を奪わないと言ったが、魔物どもが貴様の命を奪わないと約束はしていないぞ?」
そして黒い毛並みの獣人の女性がくるりと男に背を向けると、お預けを喰らっていた魔物たちが一斉に獣人族の男にとびかかった。
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