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第ニ章
迷惑な男
しおりを挟むいったん自分の気持ちを落ち着かせるために頼んでいた紅茶を口にすると、持っていた紅茶のカップを弾き飛ばされた。
ガシャンと床にカップが落ちて割れ、紅茶が飛び散った。すぐにウエイトレスの女性が床を拭く布を持ってきて拭こうとしてくれた。
「すまない、俺が溢したものだ。貸してくれ。」
「えっ、あっ…。」
ウエイトレスから布を受け取り、割れた破片を一か所に集めてこぼれた紅茶を拭いていく。拭いていると、いきなり右手を踏みつけられた。
「ハッ!!屑野郎にはお似合いだな。」
絡んできた男に上から見下され、そう罵倒される。ランとシアが今にも飛び掛かりそうになっているがアイコンタクトで静止する。
ゲシゲシと何度も踏みつけられるが、足が上がる瞬間に床の紅茶を拭き取っていった。濡れた床を拭き終えて立ち上がると、ウエイトレスの女性に破片を包んだ布を手渡し謝った。
「すまない、食器を割ってしまって…後で弁償するよ。」
男を無視し続けていると、俺の態度にむかついたらしく男は剣を抜いてこちらに突き付けてきた。
「屑の分際で僕のことを無視するなんていい度胸じゃないか。」
突然剣を抜いた男のせいで酒場は騒然となる。
「お前、そうやって剣を抜いたってことは覚悟はできてるんだろうな?」
「はぁ?覚悟するのはお前の方だ!!」
そして殺気むき出しで、いきなり剣を振るってきた。
その剣を素手で鷲掴みにしてやると、男は驚愕の表情を浮かべる。
「な、なんだと!?」
「お前のやりたいことは良~く分かった。」
男の足を払って床に転がすと、首根っこを引っ掴んでずるずると引きずっていく。
「は、離せっ!!どこに連れていくつもりだ!!」
「俺のことを倒すんだろ?あそこじゃ迷惑だ。このまま闘技場に引きずっていってやるよ。」
じたばた暴れているの気にせずに闘技場へと向かう。途中で説教を終えたミースと、こってり絞られたドーナとすれ違った。
「えっえっ!?ヒイラギさん、なにをして……。」
「さっき酒場でいきなり剣を抜かれてな、俺を倒したいらしいから闘技場でやらせてやろうと思って引きずっていたんだ。」
「酒場で……剣を!?それはホントですか!?」
ミースは男に視線を向ける。しかし男は平然と首を横に振りながら言う。
「み、ミースギルド長、この屑野郎に騙されちゃダメだ!!」
困惑するミースの肩にドーナは手を置いて言った。
「ミース、当人だけに聞いたって駄目さ。上で騒ぎを見てたやつらがいるはずだ、そっちに確認するんだよ。」
こういう争いごとの対処はドーナのほうがミースより慣れているらしい。
「わ、わかりました。ヒイラギさんすぐに戻ってきますッ!!」
そういってミース達は走って酒場のほうに向かって行った。
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